研究実績の概要 |
深部灰白質穿通動脈枝の計測では、7テスラMRI装置を用いて等方0.25mmの高解像度撮像を50-80才の被験者50人で撮像した。ただし高精細画像撮像には長時間を要する。そこで血管画像の高信号が画像全体の中に疎に分布していることを活用した圧縮センシング法による短時間撮像法を研究分担者である早稲田大学・井上真郷教授とともに研究し、撮像時間を実用的な範囲にとどめる手法をPrior Ensemble Learning法として開発した(Kubota N, et al. IJCARS, in revision)。さらに客観的評価のため、長さ・屈曲度と年齢との自動解析の研究を進めている。 定量値計測では、実用的な計測手法を提唱(Yokota Y, Okada T, et al. MAGMA 2020)し、加齢によりR1値が短縮、R2*値が延長しており、組織変性に伴う鉄沈着の影響と考えられることを報告した(国際磁気共鳴医学会2019・2020)。 MRSでは神経伝達物質であるグルタミン酸・GABAを含む脳内物質を計測して計測する手法を論文化(Okada T, et al. QIMS 2021)した。その手法により、安静時に高い活動が認められる後部帯状回で、加齢に伴い興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸には有意変化はないが、抑制性神経伝達物質であるGABAは有意に減少しており、脳萎縮による機能低下を神経活動の増加と抑制の低下により補っていると考えられるという成果を得た(Ishii T, et al. J Neurosci. in revision)。これに加えて、安静時における脳内の機能的結合と神経伝達物質量との関係の解析を実施している。 脳画像により加齢性変化を可視化することで、客観的かつ具体的に個人の脳に生じている変化をフィードバックし生活習慣の改善意欲を形成する画像手法が見えてきた。
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