老化に伴う認知機能の低下を予防、防止する事は、健康寿命の延伸に寄与するとともに、超高齢化社会の多くの問題を解決して、高齢者それぞれのwell beingを実現させる基盤となる。本研究は、老化による認知機能の低下を抑制する脂肪組織-脳連関を明らかにして、健康寿命の延伸に寄与する事が目的である。 我々のグループが見出した新しいモデルマウスの解析を行い、その老化遅延マウスは認知能力の老化が遅延するとともに、耐糖能の老化も遅延することを見出している。今年度は、その老化遅延マウスの細胞を老化した正常マウスに移植することによって、昨年度に見出した認知能力の老化の改善だけでなく、耐糖能の老化も改善することを見出した。老化遅延マウスは発生段階から継続して遺伝子改変の効果を受けているのに対して、細胞移植による一時的な効果によって、老化した正常マウスの身体機能を改善できることが示された。新しい老化治療への応用が期待できる。 さらに、高週齢老化遅延マウスと高週齢正常マウスの比較、若齢正常マウスと高週齢正常マウスの比較、老化遅延マウスの細胞を移植した高週齢正常マウスと正常マウス細胞を移植した高週齢正常マウスの三つの組み合わせで、タンパク質発現の変化をマイクロアレイ法で解析して、いくつかの老化改善に関連すると予想される遺伝子を見出した。それらの遺伝子にコードされた候補分子の一部について、高齢正常マウスへの投与を行った。その結果、老化遅延マウスの細胞を高齢正常マウスに移植した時に比べて、一部の身体機能だけが改善された。移植された老化遅延マウス細胞による老化改善は、複数の経路を用いていることが示唆された。以上の結果をまとめて、現在特許申請を準備しており、特許申請後、学会発表、論文発表などを行う。
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