研究課題
本研究では、運動器障害の主な要因となる骨粗鬆症に注目し、新規の予防手段の開発に取り組む。これまで骨粗鬆症に対する様々な候補治療薬が生み出されている一方で、申請者らも新薬の開発において先導的な役割を果たしてきた。このため、昨今では、骨粗鬆症治療薬の充足感は高まりつつある。一方、近年では、骨粗鬆症を未病の段階で食い止める予防法にも注目が集まっているが、効果的な方法が確立しているとは言い難い。そこで、本研究では、申請者が有効性を見出しつつあるエピゲノム創薬と食品科学を融合した学際的なアプローチを駆使することで、骨粗鬆症に対する新しい予防薬を開発することを目的とする。本年度は、破骨細胞のエピジェネティック制御にかかわる新規遺伝子Ochdの解析を行った。Ochdによる骨代謝制御の是非を明らかにするために、Ochd2ならびにOchd3遺伝子座にloxp配列をもつfloxマウスと破骨細胞特異的にCreリコンビナーゼを発現するマウスの系統を交配し、破骨細胞特異的な遺伝子欠損マウス(Ochd2KOおよびOchd3KO)を作出した。しかしながら、Ochd2、Ochd3と野生型コントロールの骨表現型に差は観察されなかった。そこで、次に、Ochd2とOchd3の機能代償性を検討するために、二重欠損マウスの作出を行ったところ、Ochd2KO;Ochd3HetおよびOchd2Het;Ochd3KOマウスでは有意な骨量増加ならびに破骨細胞数の減少が観察された。 この結果から、Ochd2とOchd3は協調的に破骨細胞制御を担う重要な働きをもつことが示唆され、Ochdは破骨細胞の異常によって生じる骨粗鬆症の創薬標的になることが考えられる。そこで、続いて、Ochd2とOchd3の酵素活性を阻害する食品化合物を同定するために、Ochd2に対する食品化合物のin silicoドッキングシミュレーションを行った。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、破骨細胞制御を担うOchdの機能解析が進展し骨粗鬆症の創薬標的となる候補遺伝子の同定に成功を収めることができ、おおむね順調に進展している。
今後は、in silicoドッキングシミュレーションによって明らかとなるOchd2に対して結合能をもつ候補化合物を用いて、in vitroならびにin celluroのスクリーニング法によって候補化合物の絞り込みを行う。そして、最終的に同定された化合物に関しては、骨粗鬆症の病態モデルを用いた実験を行い、予防効果の是非を明らかにすることを計画している。
in silicoドッキングシミュレーションによって同定された候補化合物を用いたin vitroならびにin celluroのスクリーニングが次年度に変更になったため、これに伴う費用の繰越が発生した。
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Scientific Reports
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Journal Bone and Mineral Research
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