研究実績の概要 |
本研究では、これまでに開発された高齢者の健康に関する統合的評価開発の先行研究 を参考にし、高齢期の「健康」の概念構造を明らかにし、評価法を確立することを目的とした。長期縦断調査(SONIC研究Septuagenarians, Octogenarians, Nonagenarians Investigation with Centenarians)のデータセットを整理し基本データを作成した。内訳は、70歳(70±1歳)999名、80歳(80±1歳)957名、90歳(90±1歳)769名であった。 RAW&Kahnのサクセスフルエイジングの枠組みに基づき身体的健康は、慢性疾患および、視聴覚機能の障害の有無、機能の維持は、SPPBおよびMOCAの得点、社会との関りに関しては、仕事もしくはボランティア活動への参加、心理的な健康状態は主観的健康観、WHO-5を用いた。それぞれの測度に複数のカットオフポイントを設定して、健康状態の分類を行った。 その結果、最も厳しい基準(疾患無、視聴覚障害無、SPPB<8,MOCA>25 および仕事もしくはボランティア活動有)とした場合、70歳、80歳、90歳の通過率は、身体的健康で26%, 14%, 6%, 機能の維持で、28%、17%、7%であり、社会的な要因も含めると、サクセスフルエイジングの達成者は、2%,0.7%, 0.1%であった。このことは、年齢が高くなるほどサクセスフルエイジングの達成が困難になるという従来の知見を支持しただけでなく、基準値の設定を見直す必要があること示唆していた。 一方、心理的な健康に関しては、各年齢群80%程度が自らの健康を良いと評価し、WHO-5のカットオフ得点を上回っていた。つまり、80歳、90歳においては身体的な健康が低下と心理的な健康が維持されていることが確認できた。
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