研究課題/領域番号 |
18K18460
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研究機関 | 富山県立大学 |
研究代表者 |
村上 達也 富山県立大学, 工学部, 教授 (90410737)
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研究分担者 |
池田 華子 京都大学, 医学研究科, 准教授 (20372162)
高田 耕児 富山県産業技術研究開発センター, その他部局等, 主任研究員 (40530621)
安田 佳織 富山県立大学, 工学部, 講師 (70707231)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ドラッグデリバリーシステム / 点眼剤 / 後眼部疾患 / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
加齢黄斑変性(AMD)は加齢が最大のリスクファクターの難治疾患であり、我が国で第4番目の失明原因である(欧米では第1位)。本研究では、AMDの点眼治療薬を開発することを目指している。 2016年に報告した、パゾパニブ内包HDL変異体を正常ラットに点眼し、パゾパニブの眼内分布をLC-MS/MSにより調べた。薬物濃度は、後眼部強膜>後眼部脈絡膜>後眼部網膜の順となった。硝子体からはほとんど検出されなかった。以上の結果から、点眼されたHDL変異体による後眼部網膜への主要な薬物輸送ルートは経強膜と推察される。また凍結切片を用いて質量イメージングを行い、後眼部にパゾパニブが存在することを直接可視化した。 コール酸透析法に代わる、新たなHDL作製法に取り組んだ。当初マイクロ流路デバイスを利用する予定であったが、予想に反して、リン脂質エタノール溶液とapoA-Iタンパク質水溶液をマイクロチューブ内で混合・静置するだけでHDLが生成することを発見したため、この生成反応を最適化することにした。この結果、リン脂質:apoA-I混合モル比、混合温度、混合後静置時間について最適値を決定した。さらに本方法では、タンパク質変性剤である尿素が適度に存在することが決定的に重要であることもわかった。具体的には、0, 1, 2, 4 M尿素存在下で収率を調べると、2 Mの時が最大となった。収率は、既存の方法(コール酸透析法)と同等であった。本手法をurea-assisted reconstitutionと名付けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画通り、LC-MS/MS分析系を立ち上げることに成功し、薬物移行ルートに関する知見も得ることができた。また期せずしてHDL作製新手法を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
Urea-assisted reconstitution法で薬物を同時内包できるかどうか、できる場合は、その適用範囲を調べる。再構成したHDLと薬物を混合して得られる薬物搭載HDLと、薬物搭載量、安定性などについて比較する。 Urea-assisted reconstitution法では、穏和な混合(ピペッティングおよび転倒混和)で十分であり、ボルテックス混合すると生成収率が低下する。この点を考慮してマイクロ流路デバイス用チップを設計する。 In vitro評価系の構築について、まずtranswell内に角膜単層培養系を立ち上げる。次にさまざまな厚みを持つコラーゲン線維層を作製し、その上で角膜細胞単層を形成させる。上部に薬物搭載HDLを添加し、HDL変異体間で薬物透過性を比較する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者が担当する動物実験が予想ほど行われなかったことにともない、物品購入費(実験動物購入費)の使用額が減少したため。
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