研究課題/領域番号 |
18K18463
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
藤本 雅大 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (10732919)
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研究分担者 |
長野 明紀 立命館大学, スポーツ健康科学部, 教授 (30392054)
小林 吉之 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 主任研究員 (00409682)
佐保 賢志 富山県立大学, 工学部, 講師 (00732900)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | バイオメカニクス / 機械学習 / 映像解析 / 歩行分析 / 転倒予防 |
研究実績の概要 |
今の超高齢社会において,転倒予防は健康寿命延伸のための喫緊の課題である.転倒は歩行中に頻繁に生じることから,日常的な歩行分析と歩容改善が,転倒ハイリスク者の早期発見と転倒予防に有効であると言える.しかしながら,現状の歩行分析には,高価な設備や身体にセンサの着用を必要とする方法が主流であり,これが世間での幅広い活用を困難にしている.これに対して,近年の機械学習や映像解析技術の発展に伴い,非接触・無拘束な形で取得できる動画像から「転倒を検出する」技術は実用化されつつあるものの,「転倒を未然に防ぐ技術」は確立されていない.その技術の確立には,バイオメカニクスの知見に基づ く転倒リスクの定量的評価が必要となる.そこで本研究では,機械学習と映像解析にバイオメカニクスの知見を融合させた歩行分析により,非接触・無拘束な形での歩容の分類と転倒リスクの評価を可能にするシステムの開発を目的としている.2018年度は,非接触・無拘束な形で取得した歩行運動のデータを機械学習により分類し,分類した歩容に基づく個人認証の精度を検証した.歩行データの取得には,電波を物体に照射し,反射波を用いて速度を計測することで非接触・無拘束な計測が可能な事はもちろん,服装や照明条件の影響を受けないことからも頑健な歩容認証が見込めるドップラーレーダを用いた.若年被験者27名を対象として,歩行時の身体各部位からの反射波として受信した信号を信号処理することで,身体各部位の速度の時間変化を表す画像情報に変換した.得られた画像を畳み込みニューラルネットワークを用いた機械学習により分類した結果,誤報率10%,認証率92%の精度で個人を認証できた.非接触・無拘束な形で取得した歩行データから,非常に高精度で個人の歩容を分類できる可能性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,非接触・無拘束な形で取得した歩行データから個人の歩容を認証する事を試みた.データ取得には,非接触・無拘束な計測が可能な事はもちろん,服装や照明条件の影響を受けないことからも頑健な歩容認証が見込めるドップラーレーダを用いた.機械学習による歩容の分類の結果,予想を上回る精度で個人の歩容を認証することができ,その実用性が確認された.当初の予定とは異なり,研究代表者の年度途中の所属変更およびそれに伴う実験環境の変更が生じたが,研究分担者との密な連携により,本年度予定していた個人の歩容を分類する推論モデルの作成とその実用性の検証は上記の通り完了しており,研究は計画通りに進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に沿って,非接触・無拘束な形での歩容の分類と転倒リスクの評価が可能なシステムの実現を目指した研究を継続する.具体的には,機械学習により個人の歩容を分類する推論モデルの作成と並行して,歩行の動画像データから,つま先高さなど転倒リスクに関連する指標を推定する事の出来る映像解析技術の確立を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の年度途中の所属変更およびそれに伴う実験環境の変更のため,当初想定していた被験者数で実験を実施する事ができなかった.そのため,当初予算に計上していた研究謝金に差異が生じている.次年度繰り越し分は,請求した助成金と合わせて,実験に伴う消耗品の費用と被験者への謝金として使用する予定である.
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