研究課題
認知症である本人が、尊厳ある地域生活をおくれる社会を創出するには、必要な社会的支援を調整する仕組(コーディネーション)とともに、必要な社会的支援の利用や提供を可能とする地域社会の構造(ネットワーク)をつくりだす歩みが不可欠である。この仮説を検証するために,東京都板橋区高島平地区を研究フィールドにして、以下の研究を実施した。(1)モデルの開発と開発プロセスの可視化:1)東京都板橋区高島平2丁目の住宅地内に,認知症の有無に関わらず,障害の有無に関わらず,地域に暮らす人々が自由に訪れ,交流できる地域の拠点「高島平ココからステーション」を設置し,ここを認知症の当事者らが集える居場所にするとともに,生活支援を創出する拠点とした.2)ここで,認知症の当事者の協力を得て,地域に暮らす認知症の当事者に呼びかけ,「生活のしづらさ」「住みやすい社会」「希望」などをテーマに自由討論を行う本人ミーティングを毎月1回開催し,当事者とともに「認知症とともに暮らせる社会」をつくる活動の基盤とした.3)上記の活動と並行して,コーディネーター(社会的支援サービスの調整に関わる専門職:行政職員,地域包括支援センター職員,介護支援専門員,認知症サポート医等)とサポートワーカー(生活支援の担い手となる当事者,家族,地域住民等)を対象に,「認知症」と「人権」にフォーカスをあてた研修会を定例的に開催した.結果:以上のプロセスを通して,1)地域の拠点や研修会に参加する人々の人権意識が高まること,2)多様な生活支援のイノベーションとネットワーキングが進展すること,3)当事者が参加する本人ミーティングが継続され,参加者も拡大する傾向が見られること,4)当事者の社会参加が促進されることが明らかになった.(2)地域に暮らす認知症の当事者を対象に、「尊厳ある地域生活の継続」をアウトカムの指標とする長期縦断研究の基盤を確立した.
3: やや遅れている
2020年度の新型コロナウイルス感染症流行により第1回緊急事態宣言下において,地域拠点の活動を一旦停止したが,緊急事態宣言解除後は,十分な感染対策の下で地域拠点の活動を開始した.ただし,当初の計画を変更し,新型コロナウイルス感染症流行下において,地域に暮らす認知症高齢者を対象とする感染対策の促進と社会的孤立の回避にフォーカスをあてた活動を展開しているため,当事者との面接による意見聴取を年度内に完了することができなかった.
新型コロナウイルス感染症流行下において,今後の調査の継続に向けて,電話及びオンラインによる調査と,感染対策のある個室における面談調査の方法を確立した.2021年度には,この手法を導入して当事者を対象とする調査を進める計画である.
新型コロナウイルス感染症流行のため,当事者を対象とする調査を計画どおり進めることができなかった.本年度は,電話,オンライン,及び感染対策の徹底した地域拠点の個室を利用して調査計画を進める予定であり,研究費は調査にかかる物品類,旅費,学会参加費として使用する.
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 3件)
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