研究課題
2018年度は会場型健診結果を用いて、認知機能もしくは身体機能が顕著に低下しているにもかかわらず、社会参加活動を続けられている高齢者の抽出を行った。この際、認知機能低下者はMoCA-J(Japanese version of Montreal Cognitive Assessment)の得点が25点を下回る者と定義し、身体機能低下者は基本チェックリストでフレイルと判定される8点以上の者と定義した。調査の結果、社会貢献活動であるボランティア活動を行っている者のうち、認知機能低下者は49%で、身体機能低下者は4%であった。他方、高次の社会参加活動と考えられる有償労働に従事している高齢者(就業者)のうち、認知機能低下者は46%で、身体機能低下者は19%であった。それぞれの機能が低下しているにもかかわらず、社会参加活動を続けることができている高齢者の疫学的背景を調べたところ、認知機能および身体機能低下者の両者において、低年齢であることが社会参加活動の有無に関連することが明らかとなった。この結果は、歩行能力などの身体能力を調整しても変化しなかった。また、身体機能低下者の就業に関しては、同居家族の有無が関連しており、独居高齢者では就業している身体機能低下者が少ない傾向が確認された。以上の結果から、比較的若い高齢者においては、必ずしも認知機能・身体機能の低下は社会参加活動の阻害要因ではないことが明らかとなった。また、生活面をサポートするような同居者がいることによって、身体機能が低下している高齢者であっても就業といった高次の社会参加活動に従事できる可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定を上回る数のデータ収集が進んでおり、次段階の研究準備も問題なく進行している。以上から本研究は概ね順調に進展しているといえる。
2019年度は、研究②であるインタビューによる深堀調査から、認知機能・身体機能が低下しているにもかかわらず社会参加活動が行えている高齢者の心理的特徴や地域帰属意識等を明らかにする。同時に深堀調査対象者に脳画像検査を行い、その神経・生理学的特徴も明らかにしていく。
インタビュー調査および脳機能画像検査の実施を次年度に回したため、繰越金が生じた。
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