研究課題/領域番号 |
18K18475
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井口 壽乃 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (00305814)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | ニュー・バウハウス / ジェルジ・ケペシュ / ニュー・ランドスケープ / 光学技術 / 光工房 / メディア・アート / ヴィジョン・イン・モーション |
研究実績の概要 |
令和元年度における研究成果の公表として、ハンガリー移民芸術家モホイ=ナジの遺作でありニュー・バウハウスの教育実践をまとめた『ヴィジョン・イン・モーション』を訳出し、解説として論文「モホイ=ナジの教育活動と理論、日本への影響について」を執筆・出版した。(国書刊行会) 新たな調査・研究として、以下3人の芸術家について実施した。①ハンガリー移民芸術家でのちにマサチューセッツ工科大学(MIT)の教授となったジェルジ・ケペシュの作品および資料の調査を、ハンガリー国エゲル市のケペシュ研究所にて実施した(2019年9月3日~11日)。その際、ジェルジ・ケペシュの研究者であるマルトン・オロス氏と面談をし、ケペシュに関する情報提供を得た。ケペシュがMIT時代にメディア・アートへと発展する過程において、渡米以前のベルリンにおける映画製作の活動が、ケペシュの視覚芸術の思想的形成の根底にあることが、明らかになりつつある。さらに1960年代の日本の写真界とケペシュとの関係が明らかとなる書簡、写真資料が、スミソニアン・インスティテューションのアーカイブから発見され、写真資料(The New Landscape, 東京展)の複写を依頼し購入した。さらにバウハウス、ニュー・バウハウス、バイオ・アートに関する近年の研究を踏まえつつ、ケペシュによる科学と芸術の融合的思想が戦時下のニュー・バウハウスにおける教育活動に基づいて獲得されたことを分析した。②ニュー・バウハウス出身の芸術家ネイサン・ラーナーについて、未亡人が所蔵する作品を閲覧した。③同スクールの卒業生でデザイナーのアート・ポールの未亡人宅に所蔵されているグラフィック作品を閲覧し、インタヴューを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り『ヴィジョン・イン・モーション』訳出し、解説として論文「モホイ=ナジの教育活動と理論、日本への影響について」を執筆・出版した。(国書刊行会、2019年) さらにケペシュの祖国であるハンガリーのケペシュ研究所に所蔵されているMIT時代のメディア・アート作品および、MITの学生作品の調査から、アメリカ移住以前にドイツでケペシュが培った萌芽的思想が、シカゴのニュー・バウハウスでの光工房における教育活動と戦時下のカムフラージュ・コースの教育活動を通じて、メディア・アートへと発展したことが裏付けられた。本研究成果は、アジア国際デザイン史会議(ACDHT2019FUKUOKA)2019年8月、九州産業大学にて口頭発表した。尚、論文はJournal of the Science of Designに投稿し、現在審査中である。
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今後の研究の推進方策 |
①ニュー・バウハウス出身芸術のアメリカにおけるその後の活動について、ネイサン・ラーナーを中心に調査・研究を進める。ネイサンの所蔵するニュー・バウハウスおよびスクール・オブ・デザイン関連の資料を調査し、同校卒業生のアメリカにおける活動を調査する。 ②第2次世界大戦中にアメリカに移住したドイツ人芸術家ウィル・ブリティンのアメリカにおける活動を調査するとともに、ウィル・ブリティンとジェルジ・ケペシュに共通する芸術概念をブリティンのデザインの仕事から分析する。その際、ブリティンがアップジョン製薬会社のためにデザインしたThe Cell 展など、ドイツのモダニスト芸術家たちの生物学的思考が冷戦期のアメリカにおいて、いかに表象されたかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
資料・書籍をインターネットによって古書を購入したため、当初の見積もりよりも安価であった。使用額の残は翌年度分として人件費に使用する計画である。
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