研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、ニュー・バウハウスの教師としてシカゴに移住したハンガリー人芸術家のジェルジ・ケペシュの戦時下のデザイン活動について分析した。ケペシュは、マサチューセッツ工科大学に高等視覚研究所を開設したことで知られるが、MITにおける研究活動を通じて、彼は科学写真に新たな視覚を見出した。1951年にMITで開催されたThe New Landscape展、および同タイトルの著書(1956年)によって、今日のサイエンス・アートの基本的理論を構築した。この科学的な視覚の探求の根底には、1940年代にスクール・オブ・デザインにおけるカモフラージュのワークショップの教育経験にその源流を見いだすことができた。本研究は論文A Reconsideration of Gyorgy Kepes's the New Landscape in Art a nd Science, Journal of the Science of Design, vol.4, no.2, 2020.pp.59-66, として公表した。 さらに上記の研究を通じて新たに獲得した知見として、ケペシュの科学的デザイン理論が、冷戦時代、資本主義イデオロギーを科学と結びつけたアメリカの国家戦略のためのデザインへと展開された点があげられる。 ネイサン・ラーナーの写真およびデザイン作品について、School of the Art Institute of Chicago のJan Tichy准教授との共同研究を開始した。コロナ禍で米国への渡航が不可能なため、Tichy准教授によるラーナー作品の撮影された画像の提供を頂いた。それらの作品分析は継続中である。ユダヤ系ウクライナ移民の2世であるラーナーが、戦時下そして戦後の社会的偏見のなかで、彼の芸術活動とどのような関係があるかを引き続き調査している。
|