研究課題/領域番号 |
18K18480
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
出口 康夫 京都大学, 文学研究科, 教授 (20314073)
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研究分担者 |
喜多 千草 関西大学, 総合情報学部, 教授 (10362419)
本田 康二郎 金沢医科大学, 一般教育機構, 准教授 (40410302)
神崎 宣次 南山大学, 国際教養学部, 教授 (50422910)
眞嶋 俊造 広島大学, 総合科学研究科, 准教授 (50447059)
大西 琢朗 京都大学, 人社未来形発信ユニット, 特定准教授 (50773529)
伊勢田 哲治 京都大学, 文学研究科, 准教授 (80324367)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 軍事研究 / デュアルユース |
研究実績の概要 |
2018年度は、計3回の研究会ならびに学会報告での討論をつうじて、研究課題である「軍事研究」の複雑さの解明に努めた。まだ確定的ではないが、この「軍事研究」という語が胚胎する複雑さを、いくつかの要素に分けることができた。第一に「軍事」に対する忌避である。軍事が戦争に関わることは自明だが、その戦争に備える手段としての自衛権に対しては賛成と反発が存在する。つまり、出発点において価値判断が分裂している状況である。第二に「軍事研究」と見なしうる領域の広さである。一般的に「軍事研究」は殺傷兵器等の開発に関わる理工学の研究だと狭義に考えることもできるが、軍からの研究助成という立場に立つ場合、たとえば哲学の様相論理が過去に米海軍から研究助成を受けていた事例などを踏まえると、際限なく拡大することになる。第三に「軍事研究」や「デュアルユース」といった語の多義性も指摘できよう。これらの語の意味そのものが日本と米国で異なるうえに、日本においても時代と世代によって意味が異なってくる。多義的な解釈が可能な「軍事研究」と「デュアルユース」の語の流通が、複雑さに拍車をかけている状況だといえる。 また、各種学会や大学における「軍事研究」の取り扱いについて、現在調査を進めている。たとえば天文学会が学会員対象のアンケート調査結果を公表している。これによると、防衛装備庁の安全保障研究推進制度について、高齢になるにつれて反対者が多くなるが、反対に若年になるにつれて賛成者が多くなっている。「軍事研究」を考えるうえで、世代の違いという要素とその違いが生じる原因もまた、本研究の考察対象とする必要があると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「軍事研究」の複雑さが明らかになるにつれ、より幅広い調査研究の必要性が生じたため、当初の見込み以上に時間がかかることが予想されるため。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方向性だが、学会の討論で受けた「軍のための研究」と「軍について考える研究」を区別するべきという重要な指摘を軸に、「軍事研究」を取り扱う上での考え方を構築する。また新たに各大学や各学会の対応の調査も本研究で実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた海外出張等を2019年度に延期したため。
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