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2018 年度 実施状況報告書

歴史的価値の創造的復元に寄与する浄瑠璃人形立体アーカイブの実現

研究課題

研究課題/領域番号 18K18483
研究機関徳島大学

研究代表者

吉田 敦也  徳島大学, 地域創生センター, 教授 (50191573)

研究分担者 笹尾 知世  徳島大学, 地域創生センター, 助教 (60789733)
浮田 浩行  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 講師 (60284311)
寺田 賢治  徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 教授 (40274261)
研究期間 (年度) 2018-06-29 – 2021-03-31
キーワード伝統文化 / 人形浄瑠璃 / 形状計測 / デジタルアーカイブ / 形状復元 / 3Dスキャナ / 3Dプリンタ / メーキャップ
研究実績の概要

本研究では,3Dスキャナや3Dプリンタ等を用いた計測・復元技術を用いて,徳島県の伝統芸能である阿波人形浄瑠璃の活性化を行うことを目的としている.平成30年度は,特に浄瑠璃に用いる木偶人形を3Dデジタル情報として記録・蓄積する「浄瑠璃人形立体アーカイブ」を構築するための技術として,複雑な素材が組み合わさった木偶人形の主に頭部を対象に,最適化された三次元計測技術について検討した.
まず,従来の3Dスキャナでは物体表面が黒い部分は形状計測が困難という問題があった.その解決には,3Dスキャナ内のカメラのダイナミックレンジを上げることが可能な装置が必要となる.このような装置の自作は困難ではないが,今年度,市販されたことから,この装置を導入し,木偶人形の形状計測に使用することにした.
次に,木偶人形全体の形状を計測するためには,人形および3Dスキャナを動かす必要がある.そこで,電動ターンテーブルやアームロボットを組み合わせた木偶人形計測システムを構成し,木偶人形頭部について,自動的に全周形状を計測する方法を検討した.特に,精密な計測を実現するため,装置間の位置関係を正確に推定するキャリブレーション方法について検討した.この内容については,電気学会研究会にて発表した.
また,木偶人形の頭内部にある,からくりの部品形状を計測するため,徳島大学医学部にて撮影されたCT画像から計測する方法についても検討した.人形頭部は乾燥した木材で作られており,人体程には明確に写らないが,木材部分の明度を精査し,木材以外を適切に削除する手法を検討した.
次年度は,木偶人形の形状等についてアーカイブを進めていくとともに,木偶人形の頭部形状データと人間の顔の特徴を組み合わせて,現代の美しさを持つ,オリジナルの浄瑠璃人形を送出するシステムについて検討する.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究における,最先端の計測・復元技術を用いて阿波人形浄瑠璃の活性化を行う目的において,平成30年度は「浄瑠璃人形立体アーカイブ」を構築するための技術の中でも,特に,複雑な素材が組み合わさった木偶人形頭部の三次元形状を計測する技術について検討した.
本年度は,形状計測装置として,従来の3Dスキャナでは難しい黒い部分もある程度計測可能な3Dスキャナを導入した.そして,計測後に平滑化処理等を行い精度向上を図るようにした.また,木偶人形および3Dスキャナを動かして,自動的に木偶人形の全周形状を計測するシステムを構築するため,従来から使用していた電動ターンテーブルとアームロボットに加え,直動ステージを導入し,これまでよりも広範囲かつ様々な方向から形状を計測できるようにした.また,装置間の位置関係を正確に推定するキャリブレーション方法について検討し,精密な形状計測を実現した.なお,本計測システムについては,キャリブレーション方法を中心に,2019年3月に開催された電気学会の研究会にて発表した.さらに,木偶人形の頭内部にある,からくりの部品形状を計測するため,CT画像を用いて内部の木材部品の形状を計測する方法についても検討した.これらの結果,木偶人形の頭部の形状を,ほぼ自動的に計測することは可能になり,アーカイブシステムの構築については,ほぼ達成することができたと言える.
しかしながら,CT画像を用いた計測においては,人形に用いられる釘等の金属と木材を区別できない場合が一部あり,これについては今後も継続して検討する.また,現時点では計測できている人形の数が少ないため,今後は,多くの人形を計測し,アーカイブデータを充実させる必要がある.

今後の研究の推進方策

本研究の2年目の目的は,人間の顔の現代の美しさを備えた,オリジナルの浄瑠璃人形を創出するシステムを開発することである.これによって,従来とは異なる,新たな人形浄瑠璃の舞台を演出することが可能になると考えられる.
そのために,まずは,昨年度はまだ不十分であった木偶人形のアーカイブ化を進め,特に人形の頭の形状データや顔の化粧の画像データを多く収集する.次に,集められた人形の頭部形状および顔の化粧のデータを用い,機械学習を行うことで,人形の顔の特徴量分布を自動分類するモデルを作る.そして,このモデルに,実際の人間の顔の特徴を適用することで,対象の人間の顔に近い人形の顔の形状および色データを創出する.さらに,本研究では,得られた人形の顔のデータから,3Dプリンタを用いて,実際の人形浄瑠璃の舞台で使用できる頭部を出力する.また,繊細な表現を要する化粧部分に関しては,当初の計画では,人形の顔の曲面に合わせて化粧を貼り付けるようなシールを,精巧に印刷して貼付することを検討していたが,最近では,3Dプリンタで出力したプラスチックの形状に直接,着色できる装置も市販されており,この装置を使用して製作する方法を検討する.
また,CT画像を用いて,頭内部のからくりを計測する方法については,釘等の金属が影響するという昨年度の問題点について,CT画像の撮影方法を見直す等して,手法の改良を検討する.そして,人間の顔の表情や動きを再現できる最適なからくりを頭内部に自動配置するシステムの開発を行う.
そして,本研究の3年目は,提案システムによる人形が,伝統的な人形浄瑠璃の世界にもたらす効果について評価を行うことを目的としていることから,そのための人形製作を進めていく予定である.

次年度使用額が生じた理由

次年度使用額が生じた理由としては,1.一部の物品が3月に納品となり支払いが完了していないこと,2.初年度に購入した3Dスキャナが計画時よりも安価であったこと,3.形状計測システムの構築に時間がかかり,様々な人形の形状を計測するアーカイブ作業が2年目に繰り越しとなり,その謝金に余りが生じたこと,4.システム構築の遅れのため,学会発表等が1件のみであったことが挙げられる.
この中で,3月納品分については,4月に支払いが完了する予定である.また,今年度,導入した3Dスキャナは,物体表面の黒い部分も形状が計測できる等,当初計画したものよりも高性能なものである.一方で,価格については,計画時の7割程度であった.残りの助成金については,本研究での計測システムにおける,3Dスキャナや人形の移動機構の導入に充てる.この理由は,現在の計測システムは,必要最低限の機構で動かしているが,機構の自由度が増すことで,より正確に形状を計測することが可能になるからである.
また,アーカイブ作業については,計測システムの改良に応じて,順次進めていく.この作業には,研究代表者や分担者らの研究室学生に協力してもらうとともに,木偶人形の貸し出しには,徳島県立阿波十郎兵衛屋敷に協力していただく予定にしている.また,本研究の成果については,研究代表者,分担者らが分担して,学会等での発表を行う.

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2019

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] 3Dスキャナとターンテーブルを用いた物体の全周形状計測システムの検討2019

    • 著者名/発表者名
      浮田浩行,笹尾知世,寺田賢治,吉田敦也
    • 学会等名
      電気学会 知覚情報/次世代産業システム 合同研究会

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公開日: 2019-12-27  

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