福祉避難所等とは高齢者,障がい者,妊婦など災害時に援護が必要な人たち(要援護者)に配慮した市町村指定の避難施設であり,自治体職員の指示で要援護者は一般避難所から福祉避難所等に移ることができる。しかし,2016年に起きた熊本地震では多くの要援護者が福祉避難所等を利用できず,十分な設備が整っていない場所で避難生活を過ごすことになった。今後,また起こりうる災害に備え,今回の熊本地震で生じた問題とその原因を明らかにし,解決策を提案することは喫緊の課題である。そこで本研究では災害時に要援護者,福祉避難所等,行政の三者の連携を深め,多くの要援護者が福祉避難所等を利用できるような支援手法の提案を目的とし,今年度は,①熊本地震時の福祉避難所等の対応,要援護者の状況等を調査し,問題点・課題を明らかにした。そしてこれらの課題の解決に向けたアプローチとして,三者に対し災害に備える防災活動,災害時の避難行動の在り方を提案した。②これらを支援するツール「防災活動・災害時避難行動支援システム」を開発し,行政,福祉避難所,要援護者である車いす使用者によるツールの体験によって,有用性や改善点を検証した。 防災活動・災害時避難の支援の在り方について:要援護者の緊急避難や避難所生活,福祉避難所等の開設状況と運営,熊本市の対応等の分析から,本研究で提案する支援の在り方について以下に述べる。対象者(主体)は,要援護者,福祉避難所等,行政(熊本市)の三者であり,彼らの連携を深め,災害時に多くの要援護者が安全に福祉避難所を利用できることを目的とし,①防災活動,②災害時,③復旧・復興,④記録と課題のフェーズそれぞれを支援する。重要なことは,要援護者と福祉避難所等をつなぐ役割である行政(熊本市)がすべての情報を分かりやすく入手,管理し,どのような状況下においても要援護者と福祉避難所等に連絡を取ることができることである。
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