本研究では東アジア諸言語(日本語、中国語普通話、台湾語)の声調、ピッチアクセントに関する規則的な連声現象(tone/accent sandhi)の様々な事例から得られる、多様な音韻規則間の相違を利用した複数の実験を行った。日本語東京方言については、単独語ならびに複合語のアクセント逸脱について、語彙記憶違反・語内部の規則違反・ポストレキシカルな規則違反という複数の条件を設定し、2件の脳波測定実験を行った。うち1件(単独語)は2022年に論文出版という形で成果を発表し、もう1件(複合語)は現在国際学会に投稿中である。加えて、近畿方言を対象としたオンライン(遠隔)反応時間計測実験を実施し、パンデミック禍でも数十名のデータを得て国際ジャーナルにての成果発表につなげることができた。 一方台湾で行うはずであった台湾語および北京語の実験は、パンデミック禍の影響で当初の計画どおりに成果を得ることができなかったが、今後別の研究資金を経て速やかに再開すべく、共同研究先との調整を行っている。パンデミック前までの研究成果は国際学会や論文などにて成果発表の機会を得た。 また、同じくパンデミックの影響で毎年の対面開催はかなわなかったが、若手研究者の育成および交流を意図した国立台湾大学との共同で企画するLinguistis Festaを毎年(対面もしくはオンライン)で継続的に開催した。こうした情報交換・相互フィードバックの機会をとおして、今後の共同研究の発展的な展開についても足がかりをつくることができた。 なお、研究代表者は中学生向けの講演や入門書の出版など、研究成果を広く一般に向けて発信することにも力を入れた。
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