本年度は、日露戦争後から国木田独歩が病に倒れるまで(明治38-41年/1905-8年)に独歩が関わった報道的な表現について調査・分析を行った。具体的には、独歩が編集長として力を入れていた『近事画報』(『東洋画報』として創刊、日露戦争中は『戦時画報』と改題)の目次データ入力をRAの力を借り行い、口絵の絵と写真を中心にその編集手法を分析した。 画像データの整理と目次情報の入力を行った『近事画報』は、解説付きカラーデジタル復刻版の刊行が予定されている。コロナ禍で刊行が遅れたが、順調に作業が進めば、2022年度中に文生書院より刊行予定である。これは、まとまった形で図書館や資料館に所蔵されておらず、カラーデジタル化も進んでいない明治期の画報誌類を利用しやすくし、歴史、美術、文学、社会学、出版史など、様々な分野における研究の促進に寄与することが期待される。 また、本年は、本研究の成果の一端を公表すべく、国際学会(ヨーロッパ日本研究会/EAJS)にてパネル発表を企画し参加、『近事画報』の口絵における報道的な表現に関する分析を発表し、歴史学、美術史、出版史、文学など多方面の研究者から反響を得た。この発表内容は、後日、『近事画報』復刻版刊行の際に他のパネル参加者とともに日本語で発表し、活字化することを計画している。 このほか、これまで取り組んできた大正期から昭和初期にかけての報道表現に関する研究内容について、本研究を通して得た明治期の事例の知見を加味しつつ、口頭発表および共著刊行も行った。非公開の画報誌研究会とジャーナリズム研究会の開催も継続し、本研究を推進する上で必要な出版・報道文化に関する知見の強化につとめた。こうした研究発表の内容は、東京大学東アジア藝文書院(EAA)およびヒューマニティーズセンター(HMC)のブックレットとして2021年度から2022年度にかけて刊行が予定されている。
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