本研究の目的は、英語の一変種でありながら、その統語的・音韻的特徴が明らかでないインド英語の言語学的側面からの特徴を明らかにする点にある。具体的には、本件申請者の専門であるウルドゥー語(およびヒンディー語 )との音韻・統語面における相互の影響を考慮しつつ、その特徴を明確にすることを目的とする。ヒングリッシュの言語学的な分析を行うことで、英語の変種としての位置づけが明確になるとともに、数億単位の話者人口を有するヒングリッシュの言語学的分析は、北インド、パキスタンで影響力を高めつつあって看過できない、英語使用に重点を置く比較的社会的地位が高く、経済的にも余裕があり、今後のインドやパキスタンを牽引していくであろう社会集団の理解にもつながる、と確信する。 2022年度は、申請者の所属機関で不定期に実施しているTUFSCinemaという映画上映プロジェクトにおいて公開された南アジア映画の日本語字幕作成時に、本研究の成果として得られた知見を反映させることができた。 また、『世界の公用語辞典』(丸善出版、2022年)や、『ウルドゥー語-日本語語彙集』(東京外国語大学拠点南アジア研究センター、2022年)執筆、作成において、本研究の成果が反映されている。中でも、『ウルドゥー語-日本語語彙集』においては、どのような英語からの借用語彙を含めるか、どのような意味で用いられているのかという点に関して、本研究の成果が反映されたと考える。
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