研究課題
最初の成果発表を2018年8月下旬に世界アフリカ言語学者会議(WOCAL9)で行い、グイ語話者の子供の音韻発達において、最も獲得の遅い子音クラスを報告し、その子音クラス全体に共通する音韻的特徴とそのクラスの内部構造を説明する仮説を提案した。討議時間には、仮説に関する言語類型論からのコメントがあった。これは、本プロジェクトが目指す、子供の音韻発達からみた「有標」の言語音の獲得パタンを音韻類型論な視点から理解しようとする構想を肯定的に評価する肯定的な意見であった。一方、批判的な見解として、資料収集法の限界について問題指摘もあった。この問題の解決のための方法論修正が当面の重要な課題となった。2019年2月にボツワナ大学で開催された国際共同セミナーで、WOCAL9での発表を敷衍した内容の報告を行った。出席者の一人は幼い子供をもつグイ語話者で、彼から、上記の資料収集方法の問題点を解決するための示唆と、今後の研究協力の申し出を得ることができた。このプロジェクトで取り扱う言語素材は2種類ある:(1)新たにフィールドワークで収集する資料と、(2)過去の調査で記録した資料(未分析録音)である。今年度、(1)の資料収集に関しては、グイ語話者集落でサーベイを実施し、子供の養育者に対する聞き取り調査から、観察対象となってくれる協力者候補の選定を行った。また、集落において子供の言語生活のスキミングを行い今後の調査実践に関連する事実を記録した。(2)に関しては、研究代表者自身の過去の録音や、同地域で過去に調査研究をした人類学者が収集した録音を対象とする俯瞰調査を行い、アナログ録音については、すべて電子化を終えた。また、その目録作成を進めている。
2: おおむね順調に進展している
初期調査の成果報告を国際学会と国際共同セミナーで行い、有意義なフィードバックを受けることができた。それにより、方法論的問題点が明確になり、またそれを解決する方法改善の目処も立った。現地調査についても、本格的資料収集をするための予備作業は完了した。全般的に見て、順調に進展していると判断される。
集落サーベイで選定した調査協力家族を対象にして、改訂した手法を用い、新しいデータの収集を進める。そして、その資料における有標の子音の獲得過程に関する一般化を解明する。また、電子化した過去の録音に観察される子供の言語資料を特定し、分析の対象を過去に拡大する。
年度途中での買い替えを検討していた研究プロジェクト用のPCが当該年度の研究活動のためには十分に機能したので、2018年度の新規購入をしなかったため、物品費の使用がなかった。PCの新規購入は、現有機器のパフォーマンスの劣化を考慮しながら、2019年度以降にする計画である。また、資料整理やデータ入力の研究補助の大部分は個人研究費など他の財源を利用することができた。また、現地での調査補助が、初期調査である今回に限っては、現地での調査補助者が無償で担当してくれた。そのため、2018年度は、人件費・謝金が少額で済んだ。この差額を利用して、2019年度以降のデータ整理やプロジェクト運営の充実化を計画している。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
In Ekkehard Wolff (ed.), The Cambridge Handbook of African Linguistics
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Africana Linguistica
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