研究課題/領域番号 |
18K18501
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
前田 佳一 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 助教 (70734911)
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研究分担者 |
日名 淳裕 成城大学, 法学部, 専任講師 (40757283)
杉山 有紀子 慶應義塾大学, 理工学部(日吉), 助教 (70795450)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | オーストリア文学 |
研究実績の概要 |
当初の計画通り、A.「『オーストリア』イデオロギーの残存」、B.「『暗い時代』の文化状況の残存、C.「冷戦下の文化をめぐる闘争」 、D.「新世代と旧世代のせめぎ合い」、E.「女性作家の台頭」という五つのテーマについて,主に首都ウィーンと,独自の文化的状況が存在した地方都市ザルツブルクの両都市を比較しつつ検討した。三名の研究メンバーはそれぞれ一度ないし二度ウィーンに資料調査ならびに現地研究者とのディスカッションを目的とした出張を行った。 前田はマックス・メルとイルゼ・アイヒンガーがそれぞれ雑誌『トゥルム』と『プラーン』において発表した詩作品と散文作品を比較した論文において(前田、2019)戦後の新世代と旧世代の作家の間に存在した「オーストリア文化」観の相克のありようを明らかにした。また、文学における固有名の機能についての論文集(前田編、2019)においてインゲボルク・バッハマンとハイミート・フォン・ドーデラーの長編作品におけるウィーン描写の比較と、そこに表象されているナチズムや東西冷戦の記憶についての分析を行った。また、2019年3月に東京大学にて行われた国際コロキウム「作者性と作者コンセプト」において1940年代のインゲボルク・バッハマンとウィーン文壇の関係について扱うドイツ語発表を行った。 杉山は郷土文学作家カール・ハインリヒ・ヴァッガールについて扱った論文(杉山、2018)において「故郷」理念の戦中から戦後への変容のありようを明らかにした。 日名はイルゼ・アイヒンガーの散文詩を扱った論文(日名、2019)におけるウィーン表象のありようを分析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究メンバー全員が、計画していた全てのテーマに関連する業績を発表することができた。また、ウィーン大学ドイツ語ドイツ文学科教授Kriegleder、Stocker両氏と現地にて研究内容に関する協議を行い、今後の活動においても連携していくこととなり、当該テーマに関する日墺間の共同研究のきっかけを作ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きA.「『オーストリア』イデオロギーの残存」、B.「『暗い時代』の文化状況の残存、C.「冷戦下の文化をめぐる闘争」 、D.「新世代と旧世代のせめぎ合い」、E.「女性作家の台頭」という五テーマに沿って研究を進める。 また、2019年10月に成城大学にて開かれる日本独文学会の枠内にてオーストリア文学における「故郷」像をテーマとしたシンポジウムを開催する。これには本研究のメンバー三名全員が登壇する。 また、2020年3月にウィーン大学ドイツ語ドイツ文学科教授Kriegleder、Stocker両氏、比較文学科教授Ivanovic氏の三名を東京に招いての本研究のテーマに関連する国際コロキウムを開催する予定である。ここでもメンバー三名全員が発表を行い、国内外の関連研究者との連携を深める機会としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月にウィーン大学教授三名を東京に招いての国際コロキウムを開催することになった。その招聘費用を確保するため、61312円を次年度に繰り越した。 今年度予算は上記コロキウム開催費用に充てるほか、資料収集費、ウィーンへの調査出張費等に充てる予定である。
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