最終年度はコロナの関係で、調査に行けず、今までの資料をまとめ、論文を書くことが中心となった。また、遠隔でのシンポジウムを毎年行っているハイデルベルク大学と企画した。そして、このテーマである「「四方四季」と異界研究―室町文芸を中心に」から見えたことは、室町の文芸、能など芸能、絵巻、宗教も含め、文化表象全体が四方四季との関係性があり、異界表現も四方四季で描かれている理由が「草木国土悉皆成仏」思想や陰陽道の中世末期的解釈からであろうとの推測に至った。 そこで、コロナ化の中の研究として、論文「植物・食物の表象文化学――古代から近世までの擬人化とその展開」(約240頁)をこの「「四方四季」と異界研究―室町文芸を中心に」のテーマでまとめ、2022年2月に臨川書店から出版することとした。その内容は特に、「怪異なるものの表現」、「植物・食物の聖性化」、「擬人化に至る経緯」、「植物・食物の擬人化」、「四方四季の構造と室町文芸」、「是外貌絵巻における四季表現としての果蔬の分析」、「水陸齋と室町・江戸初期の文芸における果蔬の位置」、「植物・食物の象徴と博物学の発展」などである。 この主題からは中世末期から江戸初期における文芸の異界表現も含めて、その当時の社会環境が文学、芸能、美術、宗教などの文化表象に強く影響を与えている事実や社会の環境が変化するにつれ、その文化表象も変化している事実を「植物・食物」を中心に明らかとし、さらに江戸の博物学発展の基礎に貢献した事実を明白化した。そして、そのような変化や文化表象そのものが東アジアの文化から大きな影響を受けている事実も明らかとした。
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