本年度は最終年度であった。本研究は、商標に関わる知的財産研究の中で新たに浮上した言語分析が大きく関わる問題に関して、コーパス言語学、語形成論、語用論、心理言語学といった言語学の諸分野の理論を応用して同問題に関する我が国における現状を明らかにし、当該分野において第一線で活躍する法学者と緊密に連携しながら言語学と法学の両分野および法実務の世界からの批判に耐えうる言語分析を展開することで、言語学の新たな法学への応用研究の形態を開発することを目指すことであった。より、具体的には、以下の研究上の問に答えることを目的としていた。(1)一般的に商標登録上、有利と考えられている頻出語と頻出姓について、我が国では言語表現の枯渇が実際にどの程度起こっているのか。(2)法学における議論で展開されている枯渇問題の認識は正しいものなのか。(3)枯渇問題への対処として言語学的・法学的・実務的に適切な取り組みとはどのようなものなのか。(1)については、先行研究に基づいて調査を行った。(2)と(3)については、法的な立場からの議論と実際の商標の認知との齟齬を指摘した上で、言語学の理論を応用した分析理論を提案した。その成果については、韓国において開催されたKorea-Japan Joint Seminar on Language and Lawというシンポジウムにおいて公表済みである。また、本研究チームは、特許庁より提供を受けた2018年までの商標登録全データで、それを元に、日本語コーパス「中納言」における、上位3000語の内容語を調査を本研究課題終了後も継続して行っていく予定である。解析にあたっては、AIを用いた情報キュレーションサービスを提供するGunosy社に依頼し、検索システムを開発しており、2019年4月にプレスリリースも行われた。
|