研究課題/領域番号 |
18K18524
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研究機関 | 東京藝術大学 |
研究代表者 |
稲葉 政満 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 教授 (50135183)
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研究分担者 |
半田 昌規 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 講師 (20538764)
大原 啓子 (貴田啓子) 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 助手 (20634918)
小瀬 亮太 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (60724143)
岡山 隆之 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 理事 (70134799)
西田 典由 愛媛県産業技術研究所(紙産業技術センター), 技術支援室, 主任研究員 (80502898)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | 楮繊維 / 修復材料 / 紙質文化財 / リーフキャスティング / ナノセルロース / 石臼式湿式磨砕法 / 湿式微粒化法 / 外部フィブリル化 |
研究実績の概要 |
保存修復分野では、劣化した紙資料の修理に、木材パルプ由来のナノセルロースからなる透明フィルムを用いる手法や、ナノセルロース塗布による紙資料の強度補強が提案されている。本研究では、紙資料の風合いを残すこと、原料に和紙原料である楮繊維を用いることを目的とし、既存のナノセルロース製造技術を応用して新規な高度外部フィブリル化楮微細繊維の調製およびその評価を行った。 昨年度の研究で楮パルプを原料として、石臼式湿式磨砕法による楮繊維の粘状叩解で、原料濃度およびディスク間隔の微調整、界面活性剤の添加により、高度外部フィブリル化(繊維表面の毛羽立ち)した楮繊維を得た。一方、原料分散液をノズルから高圧噴射させてチャンバー内部で高叩解する湿式微粒化法では、処理回数に応じてフィブリル化度の異なる楮繊維を得た。 本年度はこれら、各種フィブリル化楮繊維を、通常の楮繊維に添加して手すき試験紙を製造し、そのシート強度がフィブリル化繊維添加量の増加と共に比破裂強さが増加することを確かめた。また、修復技術者による同試料の裏打ち紙接着力の評価では、最もミクロフィブリル化を促進したものが、デンプン糊に近い接着力を示した。 楮繊維は、我が国の紙本文化財原料として多く用いられているが、同一材料である楮繊維で紙本文化財資料の修復箇所の強化がはかれること。また、生物被害に遭いやすいデンプン糊を代替できることを明かにした。このことは新しい修復材料としてフィブリル化楮繊維が有用であり、修復処理の高度化に寄与するものであることを示している。
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