研究実績の概要 |
2020年度は、アメリカでの資料調査は実施できなかったが、メールやZoomを通して海外の研究者と核の表象と言説について情報交換を行い、研究報告の機会を得ることができた。なお報告自体は、2021年5月14日に連続オンライン講義「原爆と原発の間を揺れ動く日本:メディア・プロパガンダ・サイエンス (Japan’s Split Society Between Genbaku and Genpatsu: Media, Propaganda and Science)」の一環として行った。これは厳密には2021年度の「実績」となるが、準備の段階では本研究課題と密接に関係するため、実績として記入しておきたい。 報告では、日米の核の表象の比較、日本の核の表象とその背景の分析などを行った。報告のタイトルは、「ゴジラとアトムの補完 ~1950年代の日本のマス・メディアにおける原爆と原発の関係~ (The Correlation of Godzilla and the Atom ; The Relationship between the Atomic Bomb and Nuclear Power in the Japanese Mass Media of the 1950s)」である。 日本の核をめぐる言説表象については、研究で得られた知見に基づいて、一般向けの解説書『原子力の精神史』(集英社、2021年)を上梓した。ここでは、主に冷戦構造下の日本における核エネルギー政策を整理したうえで、新聞・雑誌・ポピュラー文化における核の表象との関係性を解明した。原子炉導入に際しての原発産業や政治家のロジックがいかにアメリカの影響を受けていたのかという観点を重視した。同時に、核の言説表象が持つジェンダーの偏向について、核燃料サイクルに関する新聞記事や社会運動の報道などを検討することで、考察することができた。
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