研究課題/領域番号 |
18K18532
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
佐野 勝宏 早稲田大学, 高等研究所, 准教授(任期付) (60587781)
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研究分担者 |
諏訪 元 東京大学, 総合研究博物館, 教授 (50206596)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 考古学 / 人類学 |
研究実績の概要 |
本研究は、人類が過去100万年間以上にわたって製作してきたハンドアックスの三次元形態解析により、ハンドアックスの刃が直線かつ鋭利になり、形態の三次元的対称性が高まっていく過程を定量的データで証明する。更に、ハンドアックスの使用痕分析により、刃部の直線・鋭利化と形態の三次元的対称性の高まりが、ハンドアックスの機能変化と関連する可能性を探る。これより、原人から旧人への進化段階における、石器製作の技術発達過程を定量的に明らかにし、その背景にある認知能力の発達を理解するための基礎データを構築する。 初年度である平成30年度は、有効な三次元解析の開発に努めた。本研究では、ハンドアックスの刃の直線度、形態の三次元的対称性を定量的に評価するため、ハンディー3Dスキャナで石器の三次元形態データを取得し、取得した三次元データを三次元解析ソフトで解析する。最初に、実験サンプルにより、大きく鋭利な刃を持つハンドアックスを、ハンディー3Dスキャナで正確にスキャンする方法を確認した。次いで、エチオピア・コンソ遺跡群で回収された175~80万年前のハンドアックスを三次元スキャンした。平成30年度は、様々な年代の資料をスキャンし、形態的変位の中で刃部の直線度と三次元的対称性を最も有効に評価するための分析手法を確認した。これにより、次年度におこなう分析手法が固まった。 また、東アフリカにおける原人から旧人段階の人類への移行のコンテクスト情報について分析を進め、石器の発達段階との関わりを検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験サンプルと様々な時代の考古資料の三次元スキャンおよび三次元解析ソフトによる解析により、本年度で有効な分析手法を掴むことができた。従って、来年度以降にこの方法によって数多くの考古資料を分析すれば、ハンドアックスの刃の直線度と三次元的対称性を評価するための基礎データを取得することができる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、平成30年度にその有効性を確認した分析手法により、エチオピア・コンソ遺跡群で回収されたハンドアックスの三次元スキャンと取得した三次元データの解析を進める。定量的な評価を行うため、数量的に十分な数のハンドアックスをスキャン・解析する。また、最終年度には、ハンドアックスの形態変化と人類進化との相関に関する最終的な考察を行うため、それに必要な資料調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、本年度に人類標本に関する資料調査も実施する予定であったが、ハンドアックスの三次元形態変化の画期が見出された後に行った方が、技術発達と人類進化の相関に関する有効なデータ構築が可能であると判断した。そのため、人類標本等の資料調査は、次年度以降に集約的に行う事とした。それに伴い、本年度の物品費、旅費、謝金に未使用額が生じた。その分の合計914,095円は、次年度以降のエチオピアの研究所における調査費用およびそれに必用な物品購入費、取得データ解析のための研究補助に伴う謝金に使用する。
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