本研究は、人類が過去100万年間以上にわたって製作してきたハンドアックスの三次元形態解析により、ハンドアックスの刃部の直線度や形態の三次元的対称性の変化過程を定量的に評価する。これにより、原人から旧人への進化段階における、石器製作の技術発達過程を明らかにし、その背景にある認知能力の発達を理解するための基礎データを構築する。 上記の目的を達成するため、エチオピア・コンソ遺跡群で回収された175-85万年前のハンドアックスの三次元データをハンディ3DスキャナArtec Spiderで取得し、取得した三次元データを三次元解析ソフトGeomagic Design Xで解析した。ハンドアックスの平面形状、側面形状、断面形状、刃部の直線度を分析したところ、時間の変遷とともにそれぞれの形状の対称性や刃部の直線度が増していくことが確認できた。また、東アフリカにおいて原人から旧人の移行期とその前後を含む人類化石や当該期の動物相および古環境に関する基礎データの構築を進め、当該期の人類進化過程を評価する上で必要なデータを取得することができた。これらの調査により、石器の発達過程と人類進化との関係を評価することが可能となった。本研究成果の一部は、Proceedings of the National Academy of Sciences誌から2本の論文として発表された他、著書『African Paleoecology and Human Evolution』や『Handbook of Pleistocene Archaeology of Africa』に収録された論文としても発表された。
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