本研究は,多様な点パターンを抽出・分析する新たな手法を開発するものである.本年度は初年度に当たることから,最初に,点分布に関する既存の地理パターン抽出手法のレビューを行った.最近隣距離手法,区画法,K関数法,LQ法,空間スキャン統計など,既に多くの手法が開発されており,それぞれの特徴を改めて理解した.その結果,既存手法では,各地点近傍の点分布の特徴を密度やLocal Moran's Iなどの単一の指標に集約するために,パターンの多様性を十分に表現できないことを確認した.そこで次に,既存手法の短所を克服すべく,新たな手法の開発を開始した.交付申請書にも記したとおり,既存手法の課題を解決する方法の一つは,各地点を中心とする円内での分布の特徴を複数の指標で表現することである.円の中心からの距離帯別点密度を算出して比較すれば,各円内のクラスターを識別することができる.或いは方向別点密度を算出すれば,分布の方向性に関するパターンを抽出できる.但しこの方法では,指標群の計算量抑制と,新たな統計的検定手法の開発が必要であることから,計算量をn log n以下に抑えるアルゴリズムを検討している.現時点では,空間スキャン統計の計算量は実用的であると広く認識されていることから,その計算過程を改変して利用することを考えている.現在開発中のアルゴリズムについては,一部を実際にプログラムとして実装し,NTTのテレポイントデータを用いて動作確認を行っている.現状のPC上ではCPUの能力が低く,計算時間が実用時間内で収まらないという問題に直面している.
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