研究課題/領域番号 |
18K18536
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小口 高 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (80221852)
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研究分担者 |
貴志 俊彦 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 教授 (10259567)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 地形 / 歴史 / 地理情報システム |
研究実績の概要 |
前年度に収集した、地形と歴史的事象との関連を調べるために必要なデータの解析を進めた。地形については地理情報システム(GIS)で扱いやすいラスター形式のデジタル標高モデル(DEM)を主に用い、傾斜、曲率、斜面方向、集水面積、排水網からの距離といった指標を歴史的構造物の立地場所について算出した。さらにGISのバッファー解析を新たに導入し、歴史的構造物の周辺に複数の半径を適用して領域を設定し、その内部の地形特性を算出する作業を行った。これらの検討に基づき、水利、水害の発生しやすさ、および日射量などの要素と、構造物の立地がどう関係しているかを考察した。 歴史的事象に関してはは、日本については前方後円墳に関するデータベースと、日本城郭協会がなどが選定した城郭の位置や属性情報を用いた解析を行った。この際には、従来から定性的に用いられていた山城、平城、平山城といった城の区分と、現実の周囲の地形との対応についても検討を行った。中国については山西省にある200ヶ所の歴史的建造物に関するデータを新たに収集し、地形との対応を分析した。中国に関するデータをさらに充実させるために、蘭州などの研究者と現地調査とデータ収集に関する打ち合わせを行った。ただし情勢による制約のために現地の訪問と調査が実現しなかったため、沖縄と台湾で城郭などの史跡に関する概査を新たに行った。この際には、19世紀以降に撮影された景観写真を本研究に活用することも検討し、写真のデータベース化などを進めた。 さらに本研究に応用可能なGISを用いたデータの統計解析について、研究のレビューと手法の検討を行った。また、自然環境と人文社会の要素の相互関係を調べる本研究が、そのような関係を重視している地理学の教育にどう貢献できるかについても、特に2022年度から高等学校で必修となる新科目「地理総合」と関連付けた検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度の重要な計画の一つは、小口と貴志が大学院生と共に中国を訪れ、蘭州、天津等で歴史的建造物と地形の関係に関する野外調査と資料収集を行い、現地の研究者と議論も行うことであった。本件について2019年の夏から準備を進め、現地の研究者も訪問を歓迎する状況になっていた。しかし、9月から日本の大学教授がスパイ容疑により中国で長期拘留されるなど、現地の情勢が不安定になったため、日時の決定に時間を要した。最終的に2020年3月に実施としたが、新型コロナウィルスの問題が発生して不可能となった。そこで調査地を台湾と沖縄に切り替え、本課題と関連する内容について一定の成果を挙げた。しかし、本課題で重視している中国本土に関する検討は、予定よりもかなり遅れる状況になった。
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今後の研究の推進方策 |
調査が遅れている中国について、新型コロナウィルスに関する状況の変化も踏まえて検討を進める。状況によっては現地を訪問しなくても可能な内容に絞り、当初の予定よりも日本を重視する形に方針を変える。また、地形について詳しい検討を引き続き行うとともに、植生や気象を含む、より広い自然環境の要素についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者、研究分担者、および複数の大学院生で予定していた中国での調査が、情勢不安定と新型コロナウィルスのために全くできなくなったことが一因である。代替地域での調査は行ったが、規模が大幅に縮小した。また、研究支援者として雇用を予定していた適任者が別の職が決まって雇用できなくなり、一方で中国での新規のデータの取得が減ったために、データの処理が支援者の雇用を行わなくても可能な量になったことも一因である。次年度も新型コロナウイルスにより海外調査は限定的になる可能性があるので、複数の支援者の雇用と国内調査を積極的に進める予定である。
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