古墳や城郭を含む遺跡・史跡の分布と、地形などの環境の要素との関係を検討するためのモデルを、日本と中国陝西省に適用した。前年度までよりも使用するモデルを向上させ、古典的な度数比(frequency ratio)モデルと、機械学習のアテンション機構(attention mechanism)を組み合わせた新たな統合型のモデルを適用した。さらに、度数比のみのモデルと、従来比較的多く使用されている機械学習の最大エントロピー法を用いたモデルも適用し、適合度を比較した。その結果、いずれのモデルも現象を説明する能力を持っているものの、新たに提案した統合型のモデルが最も適合度が高いことが判明した。さらに、モデルを各遺跡・史跡の近隣の環境条件に適用した場合と、やや離れた場所の環境条件に適用した場合の結果を比較した。その結果、遺跡・史跡の種類に応じて、立地に最も強い影響を与える環境の分布範囲が異なることが判明した。この結果について、遺跡・史跡と当時の主要集落の分布の関係を考慮した解釈を行った。 遺跡・史跡の理解とバーチャルリアリティ(VR)の技術を結びつけて、教育実践に応用するために、仮想空間に再現した現実性の高い環境を観察したり,散策したりするVRのアプリケーションを構築した.対象は横浜市にある人工の横穴洞窟の「田谷の洞窟(田谷山瑜伽洞)」であり、洞窟内の三次元点群データや全天球パノラマ画像、洞窟の小型模型、環境音を活用した。また、アプリケーションの使用感と効果を、市民を対象としたVRの体験会とアンケート調査により検討した. 昨年度まで実施した古い景観写真に関する画像資料の整理と分析との関連で、写真が報道で使用される際の影響に関する検討を、歴史的な資料も活用して行った。 本プロジェクトの最終的な成果として、二編の英語論文を当該分野で定評のある国際誌に投稿した。
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