研究課題/領域番号 |
18K18537
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤岡 洋 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (80723014)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 動的映像分析 / 西北タイ歴史文化 / 8mmフィルム映像 / デジタルアーカイブ / スキーマレスデータベース / API |
研究実績の概要 |
本研究は、1971年に白鳥芳郎を団長とする西北タイ歴史文化調査団によって記録された8mmフィルム動的映像(以下、本研究資料)の再資料化を通じて、蒐集され保存されるものの活用法が再生に限定されることの多い動的映像資料について、同資料が学術的資料として文献や静的映像と同等の価値をもつ可能性を示し、その新たな価値生成のための方法論を提示することをねらいとする。
本年度は、この目的達成のために139本のフィルムを解析してショット抽出を行った上で、本研究資料記録者から得られるショット「外」情報とショット「間」情報をキャッチアップするための編集ツールの開発に注力した。このツールの試作を通じて、Hunter(1998),Blandford(2001),李(2017)に踏襲されてきた次なる分析単位であるシーン、シーケンスにもプレイリスト方式を加えることで開発方針を変えることなく編集を行える目処がたった。
具体的には、ffmpegのシーン検出機能とimagemagickを用いて映像分析を行い、およそ7時間の本研究資料が計1615ショットによって構成されていることが判明した。続いてexpress/node.jsとmonogodbを用いてショット映像から当該動的映像へのシームレス再生機能を実装した上で、研究の経過とともに往々にして起こりうるメタデータの増減/編集に対応できるよう配慮したアノテーション機能を開発した。この機能は本研究完了後に他機関へこのツールを移管してもメタデータを含むデータ内容の拡充/再整理に耐えうるよう配慮したものである。この開発思想および方向性を問うため2019年3月、デジタルアーカイブ学会第3回研究大会に参加した。奇しくも当該発表は「座長が選ぶベスト発表」の評価を受け、研究として正しく進んでいる蓋然性が高いことが確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
MVCモデルに則るWebAPIスキーマ可変型ツールの開発の可否については当初想定していた課題の一つであったが、一定の開発サイクルに目処がたった。これによりシーンやシーケンスなど、より粒度の大きさに関わらず編集が可能となり、年度計画以上の進展があった。また動的映像のショット抽出の方法として想定していたプロプライエタリなソフトウェアを使わずにオープンソースのソフトウェアの組み合わせによる実験的な試みが成功したことも想定外の成果といえる。本研究は研究協力者でもある映像撮影者との密な連携が必須であるが、定期的なミーティングと学会への同行などを通じ模擬的とはいえ具体的なデータ解析のイメージを共有できた。 これらの成果と相殺する形で実際のメタデータ作成については当初の計画で想定された量を下回わったものの、その原因はソフト開発とデータ形成を同時進行をイメージしていたためであった。編集ソフトの基本構想が固まったことで来年度以降のデータ形成は計画より迅速かつ柔軟かつに行える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、映像撮影者とともに当時の調査記録ノートとショット動的映像を確認しつつ、シーン確定とシーケンス確定を行う。この過程で生じる情報は本年度の試行ですでに、1.映像そのもの、2.映像から想起される映像外情報におおむね区別できることが判明している。 これらの情報は動的映像と音声でも記録しつつ、とりわけ2.の情報についてはさらにその情報がショット/シーン/シーケンスそれぞれの映像「外」情報なのか、映像「間」情報なのかの判定を行いつつ分析を行う。その成果は、メタデータを随時確定/変更していく過程で表出する課題も含め、動的映像分析のための新たな方法論として学会等で提言を行い、批判的検討を加えた上でさらなる展開を狙う。
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次年度使用額が生じた理由 |
【次年度使用額が生じた理由】本年度は、Davinci Resolvの代替として試したプロプライエタリ・ソフトウェアを使っての映像分析を行えたことによりソフトウェア購入を見送った。また、使用をしたffmepgのバージョンの関係で分析を東京大学東洋文化研究所が所管する計算機で行ったことにより、最新機器の購入にはいたらなかった。想定以上に編集ソフト開発に進捗があったことで、開発を止めず聞き取り調査資料集積を一時延期する判断を研究協力者でもある記録撮影者ととも行ったことで、文字起こし委託は次年度に行うこととした。
【次年度使用額の使用計画】映像撮影者の調査記録に基づく聞き取り調査内容をテキスト化を行うにあたり、その委託として諸経費として使用する。また映像撮影者より南山大学人類学博物館には調査団員全員の調査同行記録が存在している可能性が高いため、同博物館への調査に伴う諸経費として使用する計画である。
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