研究課題/領域番号 |
18K18537
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤岡 洋 東京大学, 東洋文化研究所, 助教 (80723014)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 動的映像分析 / 西北タイ歴史文化 / 動的映像 / 映像フィールドワーク / スキーマレスデータベース / API / デジタルアーカイブシステム / 動的映像資料分析 |
研究実績の概要 |
実施3年目の本年度の実績を大きく次の三点から述べる。 第一は、昨年度計画していた学会でのワークショップの実施である。昨年度確立した博物館と映像制作者との連携の下、映像の保存・整理・活用の立場から今後の学術と映像との関係についてデジタルアーカイブ学会にて討議した。そこでは映像内容とともに技術的リテラシーについての保存・継承も論じられ、学術資料としての映像のもつ研究課題が多岐に及ぶことを再認識するとともに、そのポテンシャルの豊穣さを広く知らしめることができた。 第二は、映像分析プログラムの未整理画像整理に活用する挑戦的な試みである。本年度は、昨年度までに作成した映像の資料化プログラムに、さらに画像(静的映像)分類機能を追加した。本研究対象資料を管理・保管している南山大学人類学博物館には現在、6740枚の画像が保存されているが、2002年以降整理が中断し、メタデータ作成も未完のままである。そこで1640ショットに分類されることが判明した映像に当てはまる未整理の画像をインタラクティブに追加できる機能を実装した。本研究の目的でもある映像による他種学術資料の再整理への挑戦が本格的に開始された。 第三は、論考と学会発表によるこれらの成果の公表である。第一のワークショップ後、秋田公立美術大学からの依頼を受け、デジタル化により記録が以前に比べより身体化したことに注目し、アーカイブの観点からいかに取り組むべきかを論考として上梓した。また同じく第一のワークショップで指摘のあった技術的リテラシー保存の観点から、映像分析プログラム作成中に判明した記録者の技巧=映像に日付変更を埋め込む技術を技術的リテラシーの一例として学会にて紹介をした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、前年度の成果を基に、次の三点を達成した。第一にシーン・シーケンス確定作業。第二に静的映像整理用プログラムの作成である。 シーン・シーケンス確定は、ffmpeg によって半自動抽出されたショットをまとめる作業となる。公式日誌(『上智人類学 vol.3』を底本に、唯一現在入手できる研究協力者である鈴木昭夫隊員の個人日誌の文字起し後、同一調査地をシーケンス、同一イベントをシーンとして分類した。この分類は精度は研究協力者への聞き取りに依るところが大きいが、途中コロナ禍によって高齢である研究協力者宅にはインターネットがなく、全1637ショット中746までの分析で中断を余儀なくされた。現在までのところ、シーケンス数は5, シーン数は61となっている。 また本研究は動的映像がインデックスとして他種学術資料の再整理に寄与できるかの実験でもあり、その第一歩として静的映像(以下、画像)の再整理に着手した。2002年に整理されたデータによると画像は6500以上あるが、そのほとんどが未整理のままだということが再確認された。そこで、前年度行ったタグ分類方式によって入手したデータをもとに、資料保存元である南山大学人類学博物館からサンプルデータを入手し、動的映像とのマッチングを行なえるインターフェイスを試作した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度である次年度はまず、インフォーマントとのネットワークを再構築する必要がある。コロナ禍にあってインターネット環境をもたないインフォーマントでもある研究協力者との連携に現在難を抱えており、昨年度はタブレットを貸出し解決を試みるものの、順調には進まなかった。まずは、この問題を解決したい。 その上で、シーン・シーケンス確定と画像の再整理の完成を目指す。また、従来のデータベースでは description などで未整理のまま保持される傾向があった。本研究ではこの問題に、タグ分類を視覚化し、将来の再整理にも耐えうる可変的メタデータモデルを提示したい。さらに、本研究の構築成果を持続可能にするために、本研究で得た研究者ネットワークに安全な形での公開を目指す。その際には原資料を管理運用している南山大学人類学博物館を中心に行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究にとり、資料記録者(91歳、研究協力者)への聞き取り調査が必須であるが、高齢であること、また自宅にインターネット環境がないことで電話や郵便などを利用しながら工夫してみたものの、コロナ禍中の現在、計画していた内容の聞き取りが叶わなかった。また当初研究協力者同行で計画していた出張並びに会合は全て中止せざるを得なくなった。 本年度は、モバイルルータ等を購入し、資料記録者に一時的にインターネット環境を整え、タブレットなども活用しながらリモート環境で調査を続行する計画である。
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