本研究は、8mm動的映像(以下、映像)の撮影者でもある鈴木昭夫氏をインフォーマントとし、インタビューを中心に映像分析を行ってきた。コロナ禍中、高齢(91歳)の鈴木宅にはインターネット環境がないため、昨年度同様、電話と郵便も利用しつつ時間を制限しての対面調査を行った。 調査は、前年開発した映像と写真をマッチングさせる開発インターフェイスに南山大学人類学博物館から貸与を受けた写真を取り込み、シークエンス(調査地)、そこで記録された事象(シーン)の確定を目指し、年度内にインフォーマントが調査に参加した1972年1月8日までの確定作業が完了した。もっとも、調査中には一次資料批判にもつながるフィルム接合ミスなど疑われる新たな事案も発生したが、コロナ禍もあり同博物館での調査が叶わなかったことが悔まれる。 最終年度となる今年度は、本研究の方法論の検証を、特に国内外の学会発表を通じて行った。デジタルアーカイブ、歴史学、開発経済学、地域研究など多領域にまたがる研究者との交流を通じ、映像分析が新たに学際的なコミュニティを形成する新たな可能性もあることが見い出せた。 成果発信としては、デジタルアーカイブ学会(4月)、アート・ドキュメンテーション学会(6月)、明日NET (7月)、The International Convention of Asia Scholars (8月)、Association for Asian Studies(2022年3月) にて口頭発表を行った。また、招待寄稿として、藤岡洋「更新される「記録=記憶」に挑むデジタルアーカイブは可能か」8ミリフィルムの旅:極私的秋田の日常 p.62-66 2021年3月が、共著として、大塚英志ほか「運動としての大衆文化 : 協働・ファン・文化工作」水声社 2021年9月が刊行された。
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