研究課題/領域番号 |
18K18538
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
堀江 典生 富山大学, 学術研究部社会科学系, 教授 (50302245)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 国境地域 / ポジショナリティ / ロシア / 資源辺境地域 |
研究実績の概要 |
利害対立が生じている資源辺境地域のポジショナリティが,地域住民,移民,政府,内外資本などナショナル・アクター,ローカル・アクター,そして外国アクターなどが交差するなかでどのようにポジショナリティを変容させてきたかを,中露国境地域を対象に研究を進めている。本研究は,そのアプローチの中心概念「ポジショナリティ・シフト」を軸に,土地資源を巡って,中国資本,中国人労働者,連邦政府,地方政府,土地所有者,地元農業従事者の利害が交差する中露国境地域のポジショナリティの変容を国際共同研究の枠組みで研究を行っている。本研究は,特定の場や空間における様々なステークホルダーの交差によって生み出されるローカルな「アッサンブラージュ」に着目する近年の経済地理学の新たな潮流に参画し,新たな経済地理学的視点からボーダースタディーズの進化を試みる。 以上の研究目標を遂行するため,令和元年度は,中露国境地域であるアムール州の国境農業地帯でのフィールドワークを実施するとともに,ブラゴヴェシチェンスク市,ウラジオストク市,サンクトペテルブルク市においてエスニック市場(マーケットプレイス)のランドスケープ調査を行った。また,ユダヤ自治州の農地利用の拡大について,ロシア科学アカデミー極東支部地域問題複合分析研究所Svetlana Mishchuk研究員と共同研究を進めた。これらの調査の成果は,北東アジア学会,ロシア・東欧学会等で発表するとともに,富山大学研究推進機構極東地域研究センターにおいて開催した国際コンファレンスにおいてMishchuk研究員とともに発表を行った。また,中露国境地域の大豆生産を巡るローカルなアッサンブラージュについて,Rurasia Border Review誌にて発表し,ボーダースタディーズとしての位置づけを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中露国境地域であるアムール州の大豆栽培地域を訪問し,現地農業企業に聞き取り調査を行うとともに,ブラゴヴェシチェンスク市内およびウラジオストク市でのいわゆる「中国人市場」を訪問し,そこで働く移民労働者に対し,聞き取り調査を行った。また,いわゆる「中国人市場」とロシア欧州部に見られるエスニックな市場との違いを明確にするために,昨年度に引き続き,サンクトペテルブルク市においても調査を行い,その過去二年間の調査の成果は,北東アジア学会,ロシア・東欧学会などにおいて発表するとともに,調査対象国ロシアにおいてもサンクトペテルブルク市やモスクワ市で成果発表を行い,フィードバックを得た。その成果は,2020年度に書籍に所収される形で公表予定である。また,中露国境地域の大豆生産を巡るローカルなアッサンブラージュについて,Rurasia Border Review誌にて発表し,ボーダースタディーズに関わるなど,当初計画どおりの枠組みで研究を進めている。国際共同研究としても調査を進めており,本年度は,ユダヤ自治州の農地利用に関する調査が進展し,来年度に論文発表できるように準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
ユダヤ自治州の国境地域農地利用の拡大について,現地研究者とともにフィールドワークを実施したいと考えている。最終年度となるため,成果発信に努めるとともに,論文執筆において必要不可欠なものに限定して,現地調査を実施する。国際的な成果発信のために,モントリオールで8月に開催されるICCEES(International Council for Central and East European Studies)の世界大会において,成果発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
必要とする文献の入手が予算執行期限に間に合わなかったため,次年度において必要とする文献を入手し,使用することとしている。
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