本研究では,利害対立が生じている資源辺境地域のポジショナリティが,地域住民,移民,政府,内外資本などナショナル・アクター,ローカル・アクター,そして外国アクターなどが交差するなかでどのようにポジショナリティを変容させてきたかを,中露国境地域の資源係争地に着目し,研究を進めてきた。 本研究は,新型コロナウイルス感染拡大の影響により,研究代表者およびロシア国内の共同研究者も調査のための移動が制限されたことにより,研究期間の延長を行った。残念ながら,新型コロナウイルスの猛威は,我が国だけでなく調査地であるロシアにおいても衰えることがなく,現地調査に支障が生じた,そうしたなか,代替的な研究アプローチを模索しつつ,また同時に,新型コロナウイルスが係争地域のポジショナリティに与えた影響を分析するなど,本研究の趣旨に照らし合わせた研究成果の創出を試みて来た。 その結果,最終年度においては,中露国境地域農業に対して中国企業や中国人労働者の国境を跨ぐ移動が停止したなかで,ロシア側農業従事者がどのように播種計画に対応したかを調査し,その成果を論文として公開することができた。また,その成果は,国内および国際コンファレンスや国際的なワークショップなどでオンラインによる報告を行った。さらに,現地調査が難しいなか,新たな萌芽的研究として中露国境地域における農地拡大を衛星画像により解析する試みも行い,国際誌への投稿を行った。また,当初計画に沿って,特に,ロシア極東地域の国境地域のポジショナリティの変化に関する成果物として,人間文化研究機構「北東アジア地域推進事業」プロジェクトと連携し,2022年に本研究成果を英文書籍所収論文を2022年秋に刊行することが決まっている。こうした成果により,本研究は,中露国境地域を対象としたボーダースタディーズに新たな知見とアプローチを提供する研究成果を創出することができた。
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