研究課題/領域番号 |
18K18541
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
宮脇 幸生 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 教授 (60174223)
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研究分担者 |
戸田 真紀子 京都女子大学, 現代社会学部, 教授 (40248183)
宮地 歌織 九州工業大学, 男女共同参画推進室, 特任准教授 (40547999)
中村 香子 東洋大学, 国際学部, 准教授 (60467420)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | FGM / FGC / Female Circumcision / adaptive governance / Africa |
研究実績の概要 |
宮脇は、2017年までの女性性器切除に関する論文を分野ごとに整理し、世界的な研究動向を把握する作業を開始した。またエチオピアの農牧民ホールにおいて調査を行い、ホールにおける女性性器切除についての英語論文を発表した。さらに大阪府立大学において、マレーシアおよび日本の研究者を招へいし、マレーシアにおける女性性器切除に関する国際ワークショップを開催した。 戸田は数回の研究会での報告と議論、二度の学会報告、大阪府立大学における国際ワークショップでのコメンテーターとしての準備を通して、日本国内での女性性器切除の議論が世界から取り残されていること、世界の女性性器切除研究が何を問題としているか、アフリカ人自身が女性性器切除をどのように受け止めているのかについて、最新の知見を得た。 中村は、ケニア、サンブルで、ふたりの娘の女性性器切除の施術儀礼当日、および前後合わせて10日間の参与観察を実施した。施術を含む儀礼そのものの手順と儀礼にともなう意志決定のプロセスを明らかにできた。加えて、施術者へのインタビューにより、禁止法の整備が施術に与えている影響についても考察できた。 宮地は2011年の法律による女性性器切除の禁止以降、ケニア・グシイの人々の意識にどのように変化があるのかについて聞き取りを行った。もともと1998年から2000年の間に女性性器切除の調査をしていたが、当時に比較すると、法律の影響のため、当時割礼を実施していた看護師たちも、現地の人々も公に語ることが少なくなった。そのため、女性性器切除廃絶活動を行っているNGOなどとコンタクトを取り、今後、活動について現地視察などをさせてもらうように依頼をした。またナイロビ大学の人類学者とコンタクトを取り、調査手法について相談を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定では、研究代表者である宮脇、分担者である戸田、中村、宮地はそれぞれ、自分のフィールドで調査をする予定であった。このうち、宮脇、中村、宮地は、エチオピア及びケニアの調査地で調査を行った。戸田はケニアの調査地のセキュリティが十分に確保できないために、国内における研究会、ワークショップでの報告にとどまったが、現在対象をケニアのソマリ人からヨーロッパのソマリ難民に変更して、調査を継続する予定にしている。研究代表者、分担者ともに、調査、学会報告、ワークショップの開催、論文の発表等活発に研究活動を続けており、調査計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、現地のフィールドワークおよび国際ワークショップ、研究会の開催を行う。 国際ワークショップでは、オーストラリアの研究者を招へいし、オーストラリアにおける移民の女性性器切除と、医療関係者の対応についての議論する。なおこの国際ワークショップでは、宮脇は基調報告を行い、中村は報告者として、戸田と宮地はコメンテーターとして参加する。 また研究代表者および分担者4人の共編著で、女性性器切除に関する書籍を出版する予定である。 研究代表者および分担者の個々の活動計画は、下記のとおりである。 宮脇は、女性性器切除をめぐる言説の変化を、2018年度までに出版されている諸論文から跡付ける。戸田は、①イスラームの教えと女性性器切除の関係、②欧米におけるディアスポラのソマリ人の考え方の変化、③WHOのタイプ分けにそぐわない様式の女性性器切除について研究を進める。中村は、女性たちの施術タイプの選択に関する聞き取り調査を継続し、個々の人びとの選択が、その人のどのような背景と結びついているのかを実証的に分析する。従来の施術より軽微な施術を選ぶ人が増加しているが、その要因の解明を目指していく。宮地は、調査地であるケニアのグシーにおいて、①廃絶活動を行っている団体の活動視察や関係者へのインタビュー、②割礼を実施しなくなったかつての看護師たちにその過程のヒアリング、③割礼を受けた若い世代、母親世代、祖母世代(過去にインタビューをした人々)に、意識がどのように変化したのか、していないのかなどの聞き取り調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究会に連携研究者を呼ぶ予定であったが、何人か都合で参加できず、その旅費を翌年度に回すこととした。2019年度も研究会、ワークショップを開催する予定なので、それに招へいする連携研究者の旅費に充てることとする。
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