研究課題/領域番号 |
18K18544
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
丹羽 雄一 中央大学, 理工学部, 助教 (20705371)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 沖積層 / 氾濫原 / 地殻変動 / 14C年代 / 河川堆積物 / デルタ堆積物 |
研究実績の概要 |
今年度は、八戸市の馬淵川下流域の沖積平野(以下八戸平野と呼ぶ)を対象に、新たに3地点で沖積層試料の掘削調査を実施した。また、前年度に採取した地点も含め、粒度分析や年代測定などの試料分析も実施した。採取した試料は、最近7000年間に河口から陸上氾濫原にかけて堆積したことが明らかになった。 また、八戸平野において空中写真を用いた微地形判読も前年度に引き続いて進めた。その結果、当該平野が自然堤防や旧河道の発達が顕著ではない上流部と自然堤防や旧河道の発達が顕著な下流部に大別できることがわかった。 ここまでに得られたデータを総合的に考察したところ、八戸平野では、10,000~8000年前にかけては海進期であり、8000年前以降に河川からの土砂供給によって内湾が埋め立てられデルタが発達したこと、現在の海岸線付近では外浜や前浜といった波浪の影響を受ける環境が発達してきたことが明らかになった。6000年前頃の海面高度付近で堆積したと考えられるデルタプレーン堆積物が現標高5 mよりも高位に分布することから、八戸平野では数千~1万年間においても最近10万年間と同様に隆起傾向にある可能性が示された。また、自然堤防や旧河道の発達する地域における表層の河川堆積物の年代が3000年前よりも新しいことから、3000年前頃を境に河道変化があまり生じない時期から河道の側方への移動が比較的頻繁に発生する時期へと変化した可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の研究終了段階では、沖積層試料の採取地点が予定よりも少なかったことからやや遅れているとしたが、今年度はポイントを絞った試料採取の実施や、既存の試料の活用によって、必要なデータを効率よく取得することができ、考察も行うことができた。地殻変動や河道変化の特徴を示唆する堆積物の分布や年代が得られ、研究計画にある地震と洪水に関連した自然現象の解読という観点から見ると、研究は大きく進んだと考えられる。従って、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、試料の年代測定や珪藻分析を追加で行い、堆積環境や年代の情報を増やすことで、これまでの考察内容を補強していく。最近10,000年間の沖積層や堆積地形の発達過程から地殻変動などの地震に関連した事象と河道変化などの洪水に関連した事象を解読する、という観点から成果をまとめる。研究成果の学会での発表や論文化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額に相当する金額は、当初は試料分析に用いる予定であったが、データの取得状況から、まずは現段階での考察をした上で、分析に必要な試料を選定する方が限られた予算で研究を行う上で効果的であると考えた。そのため、今年度最後の3か月は得られたデータを考察する期間として、当初予定していた分析を次年度に行うこととした。
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