研究課題/領域番号 |
18K18546
|
研究機関 | 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部 |
研究代表者 |
窪田 順平 大学共同利用機関法人 人間文化研究機構本部, 大学共同利用機関等の部局等, 理事 (90195503)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
|
キーワード | アラル海 / 環境破壊 / 復興 / 生業 |
研究実績の概要 |
本研究では、1970年以降、上流域における農業開発にともなう灌漑用水の過剰利用の結果として急激に湖水面が縮小したアラル海地域について、環境破壊からどのように復興を図るかを、環境保全と資源利用のバランスという視点での研究を意図している。本研究では、カザフスタン領のアラル海(小アラル海)及びこれに流入するシルダリヤ下流域を主たる研究対象地として、現在湖水位の保全に成功しつつあるカザフスタン領の小アラル海に着目して、漁業(水産資源)や牧畜といった生業を中心に、近年はじまった観光(エコツーリズム)等も含め、多様な資源管理のあり方を考察している。 研究統括及び水文学的視点(水循環・水資源管理研究、水のガバナンス)からの研究を、代表者である窪田が行い、研究協力者として、アラル海開発史等歴史的視点からの研究を地田徹朗(名古屋外国語大学)が、漁業資源利用と環境保全の視点からの研究を石川智士(東海大学)が担当している。また、現地での調査経験が豊富で、湖沼生態系の研究であるニコライ・アラディン(ロシア科学アカデミー動物学研究所・教授)氏に協力を要請している。 平成30年度には、これらのメンバーに、現地の状況に詳しいカザフ国立大学生態学研究センターのタルガルバイ・コヌスバエフ研究員(水産学)を加えた研究チームにより現地調査を実施し、カザフスタンのアルマトゥ、クズルオルダ、及びアラル海周辺(アラリスク等)で、関係者との面談及び打ち合わせ会議等を実施した。特に、アラリスクにおいては、地方政府の行政担当者、漁業従事者、水産加工業者等による関係者会合を実施した。現地調査の結果に基づいて、これまでの同地域における環境政策の変遷、個々の対策事業の影響等について、その目的、手法、効果の評価、住民の生活や文化に与える影響などを分析した。また、アラル海に関する研究論文等を執筆、公表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、アラル海流域について、漁業(水産資源)や牧畜といった生業を中心に、近年はじまった観光(エコツーリズム)等も含め、多様な資源管理のあり方を、国内における研究会を重ね、その方向性についって議論した。さらにその議論の上で、平成31年2月から3月に、研究代表者である窪田のほか、研究協力者の地田准教授、石川教授に加え、長年アラル海流域で調査を行っているロシア動物学研究所のアラジン教授及びカザフ国立大学生態学研究センター・タルガルバイ・コノバエフ研究員を加えたメンバーにより現地調査を実施した。現地調査では、アルマトゥ市において、カザフ国立大学、カザフスタン動物学研究所、カザフスタン漁業研究所、アラル海救済国際基金等を訪問して、情報収集にあたるとともに、研究協力を依頼した。また、アラル海周辺(アラリスク等)の現地視察、地方政府の行政担当者、漁業従事者、水産加工業者への聞き取り、関係者会合を実施することができた。その結果については現在分析中であるが、アラル海の保全及び地域の経済開発に関して、それらに関わる政策の変遷、個々の対策事業の効果や地域住民の社会経済等への影響等について、有益な情報が得られた。これらにより、平成30年度に予定していた研究をほぼ実施することができた。また、本研究の対象地であるアラル海や、乾燥地の水資源利用に係わる研究論文を執筆、刊行した。
|
今後の研究の推進方策 |
平成31年度は、平成30年度の成果を元に、現地関係者会合、現地調査を実施するとともにそれらの結果を取り纏め、第2回目の研究者によるワークショップを行う。ここで各自の分担領域の報告を行うとともに、統合に向けた解析を実施する。 本研究では、現在湖水位の保全に成功しつつあるカザフスタン領の小アラル海について、漁業(水産資源)や牧畜といった生業を中心に、近年はじまった観光(エコツーリズム)等も含め多様な資源について、環境保全を図りつつ、有効な資源利用を通じた地域の発展(復興)への取り組みを、社会と科学との協働により模索する。そこでは、ワークショップ等を通じて、「解決すべき課題」を見いだし、それを解決する過程を詳細に観察・記述・分析することで、「現場の問題を解決するための知識」がどのように生成され、改善されていくかを科学的に明らかにすることを目指している。
|
次年度使用額が生じた理由 |
交付決定が7月であったため、本来研究協力者が所属する大学の夏季休業中に予定していた現地調査が準備が間に合わず、冬季(平成31年2月から3月)に実施することになった。対象地は寒冷地であることもあって、冬季の調査には様々な制約があることから、調査用機材等で計画との差額が生じた。この差額については、次年度の現地調査の旅費等として有効活用する計画である。
|