研究課題/領域番号 |
18K18549
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
児矢野 マリ 北海道大学, 大学院法学研究科, 教授 (90212753)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 日本とロシア / 北東アジア / 環境協力 / 国際法学 / 法規範と政治と科学 / 海洋環境の保全 / 渡り鳥の保護 / 北海道 |
研究実績の概要 |
本年度は、研究基盤の強化と専門家との学際的な意見交換は一定程度進んだものの、新型コロナウイルス感染症問題の継続と深刻化、またロシアによるウクライナ侵攻により、本研究の特徴としての国境・地域を超えたフィールドワークと文理融合的な多角的討議を当初の予定通りに実施できず、期待された実績に乏しかった。ただし、下記の点については一定の作業が進んだ。第一に、日露間の生物資源の保全協力の文脈で重要な部分を占める漁業分野に関して、昨年度に引き続き国内の環境・漁業ガバナンスの専門家と、オホーツク海を含む日本の隣接海域に関する漁業資源管理レジームをめぐる議論(日露を含む国際漁業ガバナンスの勉強会:3回)を行った。これにより、一定程度機能している両国間の協力分野の最新動向について知見を得た。第二に、とりわけ日露双方にとり重要なサケ・マス漁業について、水産科学や漁業ガバナンスの専門家から成る国内の勉強会に参加し(3回)、最新の動向の把握とともに、さまざまな角度から意見交換を行った。これを通じて、上記の知見をより広い視点で相対化し、日露間の重要な国際協力分野に関してその現状と課題を把握した。これとも関連して第三に、北海道網走及び知床世界遺産地域の沿岸資源管理及び河川管理のあり方に関して、知床世界科学委員会関連の現地視察に参加する(10月)と共に、現地関係者にヒヤリング調査を行い(12月)、有益な知見を得た。第四に、越境環境協力に関する有効なアプローチとして、越境の文脈における環境影響評価に関する国際法の発展動向の整理と、日本の課題について包括的な分析と整理を行った。最後に、オホーツク海沿岸地域の持続可能な発展をめざす2つの企画(日露双方の科学者が参集し将来の両国間協力を討議する国際ワークショップ(オンライン)及び研究者・実務家による公開セミナー)に参加し、中間成果を紹介して関係者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究においては、主に五つの目標があった。すなわち、①社会科学と自然科学の協働のため、認識枠組・基礎概念を共有して分析方法を開拓すると共に、国際関係論・国際政治学等の最新の知見を踏まえ、新たな発想から、日露を含む北東アジアの国際関係で通用する法・規範モデルを、特に環境分野を意識して構築すること、②日露政府間の枠組につき、実態調査も行い、多角的な分析に着手すること、③既存の民間イニシアチブ(学術交流・共同研究・合同調査等)を発掘して、実績等も含めて分類・整理すること、④日露両国の関連国内法・政策について文献を収集し、枠組を理解すること、⑤将来の文理融合研究の可能性を追求するべく、日露両国の研究者・実務家を含む関係者と機能的なネットワークの構築を進めること、であった。 しかし、この数年間顕著な日露間の協力関係の停滞(領土問題による)と新型コロナウイルス感染症の影響、さらにロシアによるウクライナ侵攻による北東アジア含む世界の安全保障環境の悪化と国際秩序の動揺により、以上の目標の達成はかなり遅れている。まず、上記の結果として日露を含む北東アジアの国際関係で安定的に通用する法・規範モデルの構築が容易ではなく、①の作業は難航している。次に、新型コロナウイルス感染症問題の深刻化により、昨年度延期されたさまざまな企画(科学者とともにロシア極東(ウラジオストック)の研究機関(太平洋地理学研究所等)の訪問、鳥類研究者による日露間を渡る猛禽類の共同調査への同行、日本鳥学会への参加、北方領土ビザなし交流のロシア人参加者のヒヤリング調査、ロシア研究者の招聘ワークショップ(科学者と合同で開催))等)の実施が、再び中止・延期され、②、③(一部)及び⑤も当初の予定通りに進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
日本及びロシアにおける新型コロナウイルス感染症問題の継続に加えて、ロシアによるウクライナ侵攻の影響により、本研究の推進に予断を許さない状況は、今後暫く継続することが予想される。とりわけ本研究は、日露間の協力促進と地域の国際秩序の発展をめざし、また国境を越えたフィールドワークやロシア研究者・実務家との現地交流やネットワークの発展を不可欠とするからである。ゆえに、この状況が早期に収束することを期待しつつも、やや研究の比重を変え、日本国内で推進可能な4つの方策を進める。第一に、昨今の変動要因に留意しつつ、現在顕著な安全保障要因による国際協力の揺らぎに注目し、研究協力者の支援も得ながら、より広い視点で環境協力の推進にかかる新たな法・規範モデルの構想を追求し、日露関係および東アジアの特異な状況も踏まえ、その成果を検証する(①地域環境協力に関する法・規範モデルの構想)。第二に、研究協力者との協働により、昨年度コロナ感染症のため延期された自然科学系の学会(鳥学会等)にも参加すると共に、作業が遅れている既存の日露間民間イニシアチブ(学術交流・共同研究・合同調査等)の調査を精力的に進め、実績も含め分類・整理を進める(②既存の協力イニシアチブの分析・整理)。第三に、部分的に着手しているロシア環境政策・ロシア法の文献の収集・整理について、ロシア語翻訳作業も含めて加速させることにより、ロシアの主要な関連国内法・政策を可能な範囲で調査する。そして、日本の相応する関連国内法・政策と比較検討する(③ロシア関連法政策の把握と比較検討)。第四に、上記作業を受けて基礎的資料としてデータベースの作成を進める(④データベース化)。以上の全プロセスにおいて、本研究に通底する学際的視点を重視し、研究協力者の積極的支援及び多様な分野の研究者や実務家の協力を得る。
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次年度使用額が生じた理由 |
主に新型コロナウイルス感染症問題の深刻化により、昨年度延期され本年度実施見込みであった多様な企画(科学者とともにロシア極東(ウラジオストック)の研究機関(太平洋地理学研究所等)の訪問、鳥類研究者による日露間を渡る猛禽類の共同調査への同行、日本鳥学会への参加、北方領土ビザなし交流のロシア人参加者のヒヤリング調査、ロシア研究者の招聘ワークショップ(科学者と合同で開催)等)が再び中止・延期となったため、海外調査旅費と現地通訳、国内出張、海外研究者招聘・会議経費等に使用する予定であった予算を残すことになった。加えて、ロシア環境政策・ロシア法の資料収集と整理も、上記の事情もあり停滞したため、それら文献の購入費用に加えてロシア語文献の翻訳料に残額が生じた。 次年度には、延期となった上記企画に関する経費に加えて、新たな発想からの法・規範モデルの構築、ロシア環境政策・ロシア法の文献の収集及び整理の深化(購入及びロシア語文献の翻訳経費)、諸資料のデータベース化のための費用等に使用する予定である。
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