ロシアのウクライナ侵攻の継続により国境を超えたフィールド調査を遂行できない状況は続き、期待通りに研究を進めることは困難であったが、現実的な配慮から分析のアプローチとイシューをシフトさせ展開させる形で、研究基盤の強化、文献調査、関連条約の締約国会合への参加による情報・資料収集、専門家(研究者、実務家)との意見交換等も通じて進展を図った。 第1に、昨年度より着手しつあった分析のアプローチとイシューのシフトを本格的に実施し、最終成果を上げることができるよう鋭意努力した。日露間の生物資源の保全協力の文脈で重要な漁業分野に関して、サケ・マス漁業も含む両国間の漁業協力に関する条約体制とその運用について、文献の収集・調査と共に、行政実務担当者(水産庁)・関係NGOの専門家およびロシア漁業法政策の専門家にヒヤリングを実施した(5月2回、11月、2月2回)。以上を踏まえ、論考をまとめた。第3に、国内外における昨今の再生エネルギーの本格的な推進の文脈において、海鳥も含む日露間の渡り鳥への悪影響(洋上・陸上風力発電施設におけるバードストライク、生息地の悪化など)に関して、越境協力の進む欧州地域の国際法実践を参与観察するために、UNECE越境環境影響評価(EIA)エスポ―条約の締約国会合にオブザーバー参加し、欧州における越境協力にかかる先進事例などに関する情報収集とともに、さまざまな欧州諸国の専門家と意見交換を行い、貴重な知見を得た(12月、ジュネーブ)。
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