研究課題/領域番号 |
18K18552
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小畑 郁 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40194617)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 国際法学 / 憲法学 / 公法学 / statehood |
研究実績の概要 |
2018年度は、まず第1に、第二次世界大戦における降伏前後の日本における国際秩序構想・思想の分析をすすめた。そのため、復刻資料を含む外務省および海軍省の関連資料の収集を積極的にすすめ、分析に着手した。また、敗戦前後の公法学者をとりまく思想環境としてとりわけ重要と考えられる京都学派の思想について、分析をすすめた。これをうけて、降伏前後の田畑茂二郎に焦点を合わせ、国際研究集会で報告を行った。報告での結論では、次のことを主張した。①降伏を跨いで、田畑は国際社会の原子論的構造がすでに崩壊したという認識で一貫していた。②田畑は、国際社会が多元的な起源を有することを強調し、戦後のアジア地域主義の可能性に道を開いていた。③田畑は、少なくともこの時点では、ナショナリズムについて悲観論に立っていた。 第2に、横田喜三郎の思想の源流をたずねて、大正デモクラシー期の日本のリベラルな国際社会意識、とくに世界政府の主張について研究をすすめた。この関連で、広く、尾崎行雄や石橋湛山の国際社会論について、端緒的考察を行った。横田の後の議論のベースにも、彼らと共通する国際秩序思想があるという方向で、ある程度のまとめを発表する準備をすすめている。 第3に、国内外の秩序全般を公共性の観点からコントロールすることをめざす「現代公法学」の構築をめざす立場から、次のようなテーマに即した研究を行った。①現代国際社会における機能的補完性原則が確立しつつあることを主張し、国家の権限は一様でなく、内外からそれぞれ制限を受けたり、影響力を行使したりしていることを明らかにした。②人権法の倫理的・社会的基礎をさぐり、国内的原理によっては十全に正統化されてはおらず、また、国際社会の民主主義といったものも、それを基礎付けるに十分な基盤も、関連性も有しているとはいえないと主張した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2018年度は、本務校において委員免除の待遇で、研究にある程度集中できる環境がととのっていた。研究協力者との関係構築もスタートとしては順調である。
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今後の研究の推進方策 |
研究協力者との連携を強める。 関係する研究者からの国内外でのレヴューの機会を増やす。
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次年度使用額が生じた理由 |
国会図書館および外交史料館での資料検索・収集のタイミングが次年度以降となった。他の科研のための外国出張において、本科研のための用務を短期間こなし、本科研については効率的な支出となった。
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