研究課題/領域番号 |
18K18552
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小畑 郁 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (40194617)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 公法学 / statehood / 近現代日本 / 国際公法 |
研究実績の概要 |
戦争末期から戦直後(占領初期)にかけての、日本のstatehoodの再編成をめざす思想状況と公法学への影響を明らかにするため、田畑茂二郎の同時期の著作を徹底期に読み直した。今現在の仮説では、次のように理解している。田畑においては思想的「転換」は、戦直後にはほとんどみられず、思想史研究における主権論への関心の移動にも、当時の(東)アジア情勢の投影がうかがえる。しかし、他方において、戦直後期における田畑の活発な社会・政治運動への参加からすると、日本から「主権」的運動を担う主体の意識がすでに基軸に据えられていたとも考えられる。田畑がこの時期、現代の問題としては、個人の地位の問題にこだわったことも想起される。このことの背景事情を明らかにするために、この時期のアジアへのアプローチとして、民主社会主義より、さらに左翼からの、あるいは、京都を中心とする関西圏の運動における思想動向の調査・研究をすすめた。 他方、戦後日本のstatehoodの境界問題として最重要の問題であった朝鮮との関係では、国籍問題を含めた「在日」の取扱いの問題について、引き続き文献・資料を渉猟・検討した。その関連で、近代的な「国籍」概念について、一度古典的な理解を再検討しておく必要を感じ、フランスに即して論文を刊行した(単著「『経済籍』と『政治籍』の政治文化的融合としての近代的国籍」国際人権31号、2020年10月、26-31頁)。 さらに、「平和構築」によって作られる国家もそれほど珍しくない現代世界をみたときに、たとえば戦後日本のstatehoodは、どれほど特殊なのか、という問題意識から、いわば国際社会の「原子論モデル」(等質の互いに自律的な国家が距離を保ちながら併存する状態)に依拠する近代的思考枠組みとは異なる枠組みで、現代(国際)公法学を記述することは、どのように・どれほど可能か、体系構築の試みを行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
一般的に、以下のように、コロナ禍によって遅れが生じている。 日本の戦直後の状況を、一次資料によって明らかにするためには、国立国会図書館およびその憲政資料室に所蔵されている資料を徹底的に渉猟し、検討する必要があり、そのためだけに、東京に3日ほど、数次にわたり出張したいと考えていた。ところが、コロナ禍で、都道府県をまたぐ出張を自粛しなければならない期間が長くつづき、また、国立国会図書館の利用制限もあり、この計画は全く実施できなかった。 また、田畑茂二郎の戦直後期の社会・政治活動の全貌を明らかにするために、京都へ同じく3日ほど、数次の出張を計画していたが、これも図書館・資料館の利用制限や、移動の「不急」性から、全く実施できなかった。 さらに、最終的には、とりわけ韓国の研究者および中国・ヨーロッパに本拠をおく研究者を招き、国際ワークショップで、これまで研究を報告し、レヴューをうけることを計画し、その準備および意見交換のために、海外出張を計画していた。しかし、コロナ禍で、とくに短期の出張は事実上不可能になったため、全く実施できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍での外国出張は、2021年度も少なくとも半年間はむずかしいが、後半期に可能かつ適切となった場合には、即時に計画・実施できるよう、受入候補研究機関とのコンタクトを維持し、また結局不可能となった場合に備えて、意見交換のための会合を電子メールないしZoom等で設定する。 2021年度後半期には、合理的に可能かつ適切となった場合には、国内出張を積極的に計画し、実施する。 刊行資料および公法学の書籍の購入を早めにかつ積極的にすすめ、ステイ・ホーム期間・出張が厳しく制限されている期間でも研究が継続できるような体制を構築する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍によって、外国人を招聘してのワークショップ開催、その準備のための外国出張、日本国内(東京・京都)での資料渉猟・収集のための出張が全く実施することができなかった。 次年度後半期に外国出張が可能・適切となった場合には、1度は計画して実施したい。ワークショップについては、Zoomなどを利用して実施したい。刊行資料および公法学の書籍の購入を早めにかつ積極的にすすめ、出張が厳しく制限されている期間でも研究が継続できるような体制を確保する。
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