研究実績の概要 |
本研究は安定した経済社会を支える福祉制度の理想的モデルの構築を目指し,イギリス社会を例にその制度を支えた歴史的条件を探求することを目的とする。平成30年度には,国内の各大学(東北大学、東京大学、立教大学、一橋大学等)付属図書館所蔵の図書・雑誌を中心に救貧に関わる二次文献・刊行史料の収集を行い,イギリスの主要都市における救貧行政の歴史に関する基礎調査を進めた。まず、本研究課題に関連する二次文献の調査では、関連する既発表論文・著書をサーベイし、主に研究課題を厳密に規定するため研究史及び本研究のアプローチと方法に関連する文献を精査した結果、本研究課題である福祉制度の源流が長期の歴史的発展にあったことを確認し、財政効率偏重の短期的行政対策に偏る視点を改め,複眼的視点に立って政治,経済,社会の実態に即した福祉の歴史認識が現行制度の改築に必須であると認定するに至った。一方、救貧行政,慈善団体及びイギリス自治都市それぞれの歴史に関する研究動向についても調査した。とくに、自治都市における福祉政策の構造,制度,統治組織を中心に各都市の公的福祉の実態について地域的特徴をつかむために、欧米において公表されている都市救貧政策史に関する研究成果(M. K. McIntosh,Poor relief in England 1350-1600, 2012; N. Goose et al., The British lamshouse: new perspectives on philanthropy, 2016他)がすこぶる参考になることがわかった。 次に、刊行史料に関する調査では,自治都市の救貧政策に関する分析に用いる情報を整理するため,主に政府刊行史料を利用し,各自治都市の救貧・福祉政策に関連する議会法案や論争の内容について調査した。これらの史料群は膨大であるため、令和元年以降、継続して調査を行う予定である。
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