研究課題
津波避難開始と高潮避難の二ケースについて,分析を行った.津波避難開始モデルについては,津波災害時の住民の避難行動メカニズムの解明に資するために, 個人合理性および認知的不協和を考慮した避難意思決定モデルの構築を行う.またこのモデルと東日本大震災時の被災住民の避難行動データを用いて地域ごとの住民の不安感の導出と避難傾向の比較分析を行うとともに,避難率の定量分析を行った.具体的には,Akerlof・Dickens (1982)の経済心理学モデルを津波避難行動に修正した佐藤・河野・越村・山浦・今村(2008)を用いて,東北大震災における災害リスクに対する主観確率を推定した.その結果,分析の結果として不安感が地域ごとに異なること,過去に津波浸水被害を経験した地域の住民の不安感が大きいことが定量分析の結果明らかになった.また高齢者は若年層と比較して不安感が大きく,津波警報の授受は不安感に影響を与え,避難率の向上に影響を与えることを明らかになった.高潮避難については,平成30年台風第21号高潮災害を対象に避難行動に関するアンケート調査を実施し,避難行動選択によるロジットモデルを構築し,認知的不協和が避難行動に与える影響を明らかにした.主な結論は,アンケート調査結果から,自宅が浸水する可能性があると認知していたにもかかわらず,実際には避難行動をとらなかった人が多いことがわかった.リスク認知と発災時の危機意識が繋がらない,認知的不協和があると考えられる.また,避難行動選択によるロジットモデルの分析結果から,推定された主観的な平均死亡確率pd*は0.0014%,主観的な平均災害発生確率ps*は0.0006%となった.つまり,認知的不協和の影響により死亡確率を不当に低く見積もっていたことが示された.
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