研究課題/領域番号 |
18K18568
|
研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
軽部 大 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (90307372)
|
研究分担者 |
内田 大輔 九州大学, 経済学研究院, 講師 (10754806)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | 日本 / 中国 / IPO / 正当性 / 信用供与 |
研究実績の概要 |
研究実施の初年度となる2018年度は、実証研究の基礎となるデータベースの構築に注力した。具体的には、日本のIPO企業については、日本の新興市場に1999年以降2014年までに上場した841社のトップマネジメントの個人属性データ(氏名、年齢、職位、学歴、前職)を整理し、前職組織を同定し、名寄せ作業を完了した。その結果、前職組織として12848組織を確定し、前職組織を、教育機関(大学、高校、中学、小学校、専門学校)、金融機関(民間・政府系、銀行・証券・保険、ベンチャー投資会社)、会計士・会計事務所・監査法人、税理士・税理士事務所、コンサルティング・コンサルティング業務提供組織、医師・病院・医療法人、中央政府、地方公共団体、その他公益団体、分類不能に分類した。2年目の2019年度は、役員の前職とIPO前後の企業パフォーマンスの関係について多面的に検討を実施する計画である。 また、中国IPOに関する実証研究データも計画通り構築作業を推進した。具体的には、中国上海証券市場の創業版に2009年から2016年までに上場した580社を対象に、公開される目論見書と開示資料に依拠して、役員氏名、個人属性、前職に関するデータを収集した。その結果、のべ15810名を同定し、名寄せ作業を行った。前職組織の整理作業を2019年度前半に実施することで、日中比較可能な実証分析の研究データセットが完了する予定である。 これらのデータセットは、公開データを基に構築されたものであるものの、独自に構築された体型的なデータ収集作業によって可能となったものであり、IPOプロセスに伴うカテゴリと正当性の確立過程を解明する有用な出発点となると考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度のデータ構築作業は、概ね順調に推移したと考えられる。計画通り、二年目に本格的に実証研究を推進する予定である。具体的には、日本のIPO過程に関するデータ収集については、個人データの収集が計画通り完了し、実証研究に本格的に取り組む段階にある。中国IPOに関するデータは個人の名寄せ作業が終了したことも計画通りである。前職組織については、12万組織を超える大規模な名寄せ作業が必要とされるが、適宜中国企業に精通した研究アシスタントの協力とその増員を得ながら作業を加速する予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
役員の個人属性と前職に関するデータ構築作業を二年目の前半期に完了し、創業ネットワークという観点から日中の創業プロセスに関する実証研究を推進する予定である。特に中国企業については、前職データを体系的に整理するためには大規模な名寄せ作業が必要であり、中国企業に精通した研究アシスタントの強力と増員を得ながら作業を加速する必要がある。この点については特に留意して研究を推進する。完成予定のデータセットを活用して、新規ビジネスの制度化過程を、人的ネットワークの形成過程という視点から明らかにする計画である。 また、二年目の後半期には、IPO時に証券取引所に提出される事業目論見書の事業説明欄を利用して、ビジネスモデルに関するデータ収集を開始し、2020年1月までにデータセットの構築作業を完了する予定である。具体的には、事業説明に関する記述文から、事業の新規性に関する説明文を体系的に取得し、既存の表現文や既存のキーワードの組み合わせによって新規事業の新規性がどのように説明されるのかについて明らかにする計画である。この作業が完了することにより、研究計画開始時点で提案されたデータ収集作業が全て完了する予定である。 一連の作業を実施推進することによって、日本と中国の両国におけるIPOプロセスをカテゴリの創出と正当性の確立という側面から実証的に検討する研究を推進する計画である。併せて両国のIPO過程を概観する歴史的視点に基づく鳥瞰的研究も推進する計画である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初中国IPOに関するデータ収集に想定していた労働集約的な作業を大幅に削減する方法を確立したため、データ収集に必要な旅費・人件費を大きく削減することが可能となった。他方で、大量の前職データを手作業で処理する必要があるため、その作業を計画通り遂行するために、その労働集約的作業に主として活用する計画である。
|