研究課題/領域番号 |
18K18571
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
澤木 聖子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40301824)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2020-03-31
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キーワード | ながらワーカー / がんサバイバー / がん治療と仕事の両立支援 / 働き方改革 / 治療のクール / ピア・サポート |
研究実績の概要 |
本研究は、ACジャパンが、日本対がん協会による「がんは治療しながら働く時代へ」をキャッチコピーとして広報活動を展開した「ながらワーカー」の概念整理を出発点として、がんや難病を罹患しながら働く人々のワークライフケアバランスについて、企業組織や社会が取り組むべき課題を検討することを目的として進められてきた。当事者個々人の視点に立脚した時、組織や企業の取り組みが直面している課題を抽出し、個人と組織が統合できる真の就労環境の確立を目指したいと考える。 2018年度は、研究の問題意識、フレームワークの精緻化をはかるため、働き方改革をめぐる行政や企業の動向を探索的に追い、国立がん研究センター等の関連機関による先行研究、厚労省が平成28年に発表した「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」(平成31年3月改訂)など、医療、福祉、経営学、心理学を中心とする複合領域から先行研究のレビューに着手してきた。 ACジャパンのキャンペーンやがん治療に特化した生命保険会社のCM、著名人の罹患をカミングアウトする風潮などを通じて、日常のメディアの中でがんに対するイメージの変化や社会的関心は常態化している。企業経営の現場においても、ダイバーシティ・マネジメントや福利厚生の視点から、人がん治療と就業の両立支援を組み込む人的資源管理施策の事例は多く見られるようになった。がん患者が働ける就労環境の整備が進む社会的風潮の中、一方で罹患者である当事者は、自らの「働くことと生きること」を通じた葛藤から解放されないままであることも判ってきた。 今年度の研究は、主に先行研究のレビューや罹患者によるウエブ上のコミュニティサイトで展開される言質の分析を中心として行うに留まった。これらの文献研究からまとめられた知見に基づき、研究のフレームワークの再構築を行い、ヒアリング調査の質問項目作成へと進む予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究課題の進捗が遅れている理由は、大きく2つある。 一つは、2017年度に終了予定であった課題研究(k16k13382)の遂行が、働き方改革法案決議の遅滞に伴う研究計画の変更によって2018年度まで期間延長となり、先の研究課題を優先して着手する必要があったことから、本研究に注力する時間を確保することが困難であったためである。 もうひとつは、学内業務で担当した個別対応の学生支援業務に予想外の時間を費やすことになり、本研究のための調査や研究打ち合わせ等の日程調整が先方都合との交渉において予定通りに行えなかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
研究課題遂行の遅れを取り戻すために、初年度の研究計画の内容に加え、国立がん研究センターと提携してがん治療と就業の両立支援体制に力を入れ、社会的にも注目されている製造業、商社などの企業を事例として取り上げインタビュー調査を進める。その前提として、がんや難病に罹患して就労している人々の声を先に聴く手続きも踏み、当該組織で行われている支援体制の評価に関する質問項目を作成したい。その際、働くがん患者に個別にアプローチをすることが困難であることも予想されるため、企業内外のピアサポートサークルやケアカフェなどのコミュニティに参加し、取り組み事例に対する当事者の意識や課題について聞き取りを行う方法も取り入れていく必要があると考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、当初の計画通りの調査研究が執行できなかったため、一部の文献購入の使用に留まった。 次年度は、医療・福祉・心理学・経営学関係の専門書の購入と、日程調整が可能な限り、本研究に必要な関連団体や調査対象企業への調査研究費(旅費)の使用を遵守していきたい。
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