研究課題/領域番号 |
18K18571
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
澤木 聖子 滋賀大学, 経済学部, 教授 (40301824)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
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キーワード | 「ながらワーカー」 / 多様な働き方 / 両立支援 / カミングアウト / がんサバイバー / covid-19 / 意識のバリアフリー化 / プラットフォーム労働 |
研究実績の概要 |
新型コロナ感染症の影響により、働き方の様相が大きく変化したこともあり、在宅勤務やリモートワークの推進が、従来の両立支援策のフレームワークとは異なる要因で進んだ。それにより、研究の理論的枠組みの修正を図る必要が生じ、調査項目にコロナ禍の影響を加えて再設計をしている。本研究の「ながらワーカー」に対する問題意識は、日本対がん協会のキャンペーンに端を発している。研究手法としは、質的研究に含まれるGTA(Grounded Theory Approach)の初期の研究が,がん患者本人と患者を取り巻く第3者間の相互作用に着目したものであったことから、本研究においても、データ対話型の分析視覚によってインタビュー調査によるデータ収集とコーディングを計画してきた。分析対象は、「ながらワーカー」を本義のがん患者から、働く傷病者、働く介護家族、働く育児家族、ダブルワーカーに拡大し、それぞれの分析テーマを具体的に設定して、インタビューを続けてきた。 2020年度は、前年度から続けていた厚生労働省の「がん対策推進協議会」(2007年-2020年)の議事録や、国立がん研 究センターによって実施された「がんと共に働く」プロジェクト(2014年-2019年)による報告資料の分析、働く傷病者のブログを通じたキーワードのコーディングを継続中である。 しかし、2020年度の計画においては、研究協力者であるがん罹患者の急逝とCOVID-19による医事関係者との定期的な打ち合わせが困難となり、事実上、研究計画通りの作業を進めることが困難となり、研究実績をあげることもできなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
COVID-19による大学教育のオンライン化対応により、研究活動を進めることが困難になった。とりわけ、本研究の研究協力対象となる医事関係者の多忙と、組織で働く病者研究協力者の逝去により、情報提供を予定通り受けることができなくなり、当初の計画に沿って研究に着手することができずに年度末を迎えるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
前年度に続き、働くがん患者と企業の人事担当者を対象に、主に次の点についてヒアリング を実施する。1)新型コロナウイルス感染症対策以降に普及したリモートワークや在宅勤務などの適用状況、2)育児・介護・障害・高齢など多様な制約下で働く従業員と疾病(がん)治療中の従業員に対する人的資源管理施策や意識の異同、3)がんサバイバーの人材活用における課題。また行政、民間の関連機関を対象に、働く疾病者をめぐる当該事実に対する偏見の諸相や正しい知識、啓蒙教育の取り組み事例や社会課題についても聴き取りを実施したい。組織で働くがんサ バイバー=「ながらワーカー」の職務意識や自己アイデンティティを明らかにするのと同時に、雇用する組織が、彼・彼女らを組織の人的資源としてどのように位置づけて遇しているかの実態を明らかにする。これを通じて、疾病や障がいのある個々人の雇用機会をめぐる意識のバリアフリー化を目指した個人と社会の統合モデルの構築を目標としたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
補助事業の実施にあたり、2020年度に延長の許可を受けていたものの、COVID-19の影響により、医療関係へのヒアリングや研究会の実施などを行うことができず、使用額に残が生じた。 一年の遅れに際し、研究計画の一部見直しを図り、当初の調査費や分析に必要な経費の適正支出が進められるよう努力したい。
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