本年度は、昨年度実施したアンケート調査によって得られた離婚経験のある男女それぞれ約1000名の回答に対して、計量経済学的な分析を行い、その結果をもとに、論文 “Economic Conditions and Subjective Well-Being after Divorce”をまとめた。 具体的には、アンケート調査によってリッカート尺度を用いて計測した Life Satisfaction、Sense of worth、Happiness、Anxiety、Depression の5つ幸福感に関する指標について、回答者の所得・資産を含む属性と離婚時の夫婦間での取り決めに関する情報を説明変数とする順序プロビット・モデルを推計した。分析結果の概要としては、離婚後の幸福度の変化は1年半程度で消滅するが、資産から得られる幸福感については、男女で差があることが明らかとなった。男性は金融資産からのみ幸福感を得るが、女性は実物資産からも幸福感を得ることが示唆される結果となった。この結果は、離婚後の財産分与に関して、女性に対して実物資産を配分することが、離婚後の幸福感を高める可能性が高いことを示唆する結果であった。従来より多くの研究で見られた、年齢による幸福感のU字型の変化については、5つの指標すべてに推計された。また、所得水準が幸福感に与える効果には男女間で差はなく、未成年の家族の数は幸福感に影響を与えないという結果となった。 現在論文は、“Economic Conditions and Subjective Well-Being after Divorce”のタイトルで、国際的な査読誌に投稿中である。
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