研究課題/領域番号 |
18K18577
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
國部 克彦 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
|
キーワード | マテリアルフローコスト会計 / アジア / 環境 / MFCA |
研究実績の概要 |
令和元年度は,「アジアにおける中小企業に適したMFCA手法の開発」をテーマとして1年目の現状分析に関する成果を受けて,アジアの中小企業に適したMFCA手法の開発を行った。特に,タイ,ベトナム,台湾などのMFCAの事例を分析し,ISO14053で開発中のMFCAバランス集計表の適用可能性について検討した。アジアの中小企業は,経営資源が限定されている場合が多いため,特に簡易なMFCA手法を要望している傾向が強く,MFCAバランス集計表のような手法の有効性は高いと推定された。 MFCAは単独で利用するよりも,環境マネジメントコントロールシステム(EMCS)と連携させることが重要であるため,この点についての研究も行い,日本企業の分析についてアジア太平洋学際的会計研究学会で報告した。また,ベトナム企業の現状についても,質問票調査をもとに分析し,論文として公表した。MFCAをEMCSと連携させる場合には,MFCAの高度な戦略的適用とマテリアルフロー管理のオペレーショナルな管理は区分して理解すべきであり,MFCAの段階的な適用が重要であることが示された。 SDGsとMFCAの関係については,SDGsの12番目の目標である持続可能な消費と生産(SCP)とMFCAの関連性について分析を進めた。SDGコンパスにおける,SDGsの導入ステップの中にMFCAを位置づける方法について研究した。現状のSDGコンパスは,経済的な指標の活用面で限界があるため,そのステップに,MFCAを導入することの意義は大きいと考えられる。また,日本企業についてのMFCAと廃棄物管理との関係性分析,およびMFCAの継続的利用についても論文を国際ジャーナルに発表することができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和元年度は,「アジア企業に適したMFCA手法の開発」をテーマとして,1年目の現状分析に関する成果を受けて,中小企業を含むアジア企業に適したMFCA手法の開発を行い,タイ,ベトナムでのMFCAの適用の可能性を両国の比較分析によって検討することができた。さらに,台湾では,MFCAの導入がアジア諸国の中では最も進んでいるので,日本と比較することでその特徴を明らかにすることができた。また,MFCAと環境マネジメントコントロールシステムとの関係や,MFCAとSDGsの関係についても,順調に研究が進捗した。さらに,日本企業を対象にしたMFCAの継続的利用およびMFCAと廃棄物管理,ベトナム企業を対象にした環境マネジメントコロンロールシステムに関する研究論文を公表することができた。 これらのことから,「おおむね順調に進展している」と評価する。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,過去2年間の研究成果を取りまとめ,アジア諸国でのMFCAの普及促進のための政策について研究する。MFCAの普及には,企業にとっての課題と,政府にとっての課題があるので,この両者が融合できるように研究成果を取りまとめる。さらにISOの国際標準化がアジアでのMFCAの普及に果たす役割とその効果についても検討する。また,タイ,ベトナム,台湾に関するMFCA研究を論文としてジャーナル投稿を目指すとともに,MFCAと環境マネジメントコントロールシステムおよびSDGsとの関係についても研究を取りまとめる予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から令和元年度末に予定していた国内外出張および研究会の開催を見合わせたため,旅費の支出が不要となり未使用額 が生じた。このため,調査のための出張および研究会の開催を,新型コロナウイルス感染拡大による行動制限が緩和された時点で実施することとし,未使用額はその費用等に充てることとしたい。
|