研究課題/領域番号 |
18K18578
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
馬場 新一 神戸大学, 経営学研究科, 経営学研究科研究員 (50722641)
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研究分担者 |
國部 克彦 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
森村 文一 神戸大学, 経営学研究科, 准教授 (80582527)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2024-03-31
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キーワード | 災害復興支援 / Cause Related Marketing / 企業と消費者が協力 / エシカル消費 |
研究実績の概要 |
本研究は、災害支援策の1つとして、寄付金付き商品の販売である”Cause Related Marketing(以下CRM)”に着目をして研究を進めた。 寄附(金以外含む)付き商品のCRMは、企業のプロモーション企画として広がっている。企業は、時宜に応じたテーマを選択して、プロモーションとして活用している。寄附付き商品の販売をネット検索した結果、2011年以降では125件検出した。2011年は東日本大震災のテーマのみで9件実施された。2021年は43件と増え、テーマ別では、コロナ関連が9件と最大で、災害支援は5件だった。企業のCRM活用は増えているが、消費者の社会貢献消費への意識は低いままである。【消費者庁2020年調査報告:復興応援に関連した商品の購入経験45.4%、そのような機会がない23.4%、購入したことがない31.2%】 発災後早期に実施される被災地支援の企画セールは、被災地にある大きなダメージがなく商品を供給できる事業者の支援になっているなど、被災を受けた事業者や人への支援には不十分な内容があった。発災以降の支援で、消費者の負担が少なく継続して実施できるCRMは、支援事業の選択肢になり得る。なお、復興支援は、エシカル消費の分野になるが、エシカル消費の知名度は12%と低く一般に浸透していないのが課題だ。 消費者の行動と企業のCRM活用がマッチングするためには、消費者の社会貢献意識を高めることが課題となる。ただ、消費者調査では、寄附金付き商品で支援する対象を選択させると、「災害復興支援」が一番高い共感度であった。継続支援のためには、企業と消費者が消費で社会貢献するには、「エシカル消費」の意識を高めた消費行動に変容させていくことが、今後の課題と言える。消費者が企業を信用して、消費行動をすすめるためにも、寄付金を預かる企業の情報開示が、相互の信頼醸成に不可欠となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
災害発生後の支援の多様な取組の1つとして、事業者や人などの支援にCRMが活用できる。CRMは、社会貢献消費であり、企業と消費者の協働が成功への重要なカギになる。事業者側と消費者側の両面から研究を進めてきた。2030年までに達成を目指すSDGsの課題にも、被災地支援が取り上げられている。被災地の事業者、商店街、被災者等の聴き取りから始め、アンケート調査、ネット情報検索などで得たデータをもとに、災害支援策としてCRMが有効な手段であると認識できた。 ただ、消費者の社会貢献消費の意識が低いことから、エシカル消費が定着する行動に変容させる要件を明らかにする課題が残っている。 消費者意識に着目した場合、現在の大学3年生以下は消費者教育を受けており、SDGsの理解もして社会貢献活動を、実行しているまたはしたいという意識を持っている。根拠は、神戸大学のSDGs推進プログラム学生委員会が実施した「神戸大学生のSDGs意識調査2022」である。社会や環境のためになる行動頻度の設問では、週1回以上が64%、月1回以上になると83%の学生が行っていると回答している。可処分金が少ない学生でも、社会貢献消費を実践する行動につながれば、一般消費者への応用も可能と考え、研究の残存期間で大学生をモデル消費者とした、社会貢献消費の定着を図る実証実験を実施する。エシカル(倫理的⇒社会貢献)消費の定着と被災者支援消費への連動を意識付けて、通常の生活に定着させる方策を明らかにする研究を継続する。情報の提供と集約、公開用にホームページを用意した。
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今後の研究の推進方策 |
社会貢献を意識した消費行動を、消費者が自発的に実施するために、どのような情報を提供するか、効果的な内容と方法を明らかにする実証実験を実施する。消費者教育を受け、社会貢献消費への意識も高い消費者として、大学生を設定し行動変容の研究をする。大学生の消費場所は、データの測定がしやすい大学生協とし、情報の提供、共有化、店頭周知を組合わせて、社会貢献消費の意識を高める実験をする。本年度に神戸大学生を対象に、神戸大学生協の協力で、イメージ調査と行動調査を実施し、実購入につながっているかを検証する。SDGsの知識を学んだ大学3年生以下の学生は、どのような情報に反応し、消費行動を変容するかを調査する。情報提供は、店頭周知、ホームページ、生協の学生対象のLINEを活用する。学生から委員を募集して、学生間での情報の発信と交流、販売企画の立案などに関与させる。多様な施策を実施して、施策毎にエシカル消費対象品の販売実績を把握する。 アンケートも実施するが、販売データの補完として活用する。アンケート調査では好意的な回答を得ても、実行動の商品購入に結びつかないことがあるため、購入に至ったかを重視して分析する。 動画情報提供による行動変容は、共同研究者の森村が、動画編集でインパクトの強度を変えて準備し調査を実施する。インパクトの強度に関連させて店頭情報も調整する。年間の授業期間で調査を行い、結果はホームページにLABOのサイトを設けて公開する。 また、売場でのインパクト差異と販売の関連性を分析する。購入者調査をgoogle-formで実施し、購入者情報を分析し、インパクトのデータ保管とする。エシカル消費の定着と災害発生時に寄附金付き商品の購入の関連については、災害発生などは不確定要因のため、聴き取りおよびネットでの調査で代行する。このため、エシカル消費の定着までが今年度の研究課題とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
2023年度に神戸大学生を他仕様として実証実験を実施するため。 2022年度に一般消費者のアンケートを予定していたが、消費者教育を受けている大学生で実証実験をするほうが、研究の精度と成果が上がると判断して調査の時期内容を変更した。 2023年度予算としては、調査用の動画編集費用と店頭販促物の制作、調査アルバイトの人件費を予定している。
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