研究課題/領域番号 |
18K18580
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
濱口 伸明 神戸大学, 経済経営研究所, 教授 (70379460)
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研究分担者 |
藤田 昌久 京都大学, 経済研究所, 特任教授 (90281112)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2021-03-31
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キーワード | 製品差別化 / イノベーション / 中心市街地機能 / 国際化 |
研究実績の概要 |
地域資源に基づく一次産業を中心に生産活動を行っている地方を念頭に置いて、一次産品の差別化を行う生産者が大都市市場から離れた地方に立地可能となり、製品差別化を行う一次産業の存在が国全体の消費者の効用を上昇させることを一般均衡空間経済モデルの枠組みで証明した研究成果を英文学術雑誌で公刊した。(2)宮城県・岩手県の三陸沿海地域において臨地調査を行い、東日本大震災で津波浸水被害を受けた地域の復興状況について情報収集を行った。調査の要点は、この地域の伝統的産業である水産養殖業において、コミュニティを基盤にした資源管理を行い、製品差別化、国際認証取得によって製品を差別化し、収入増加と労働時間の減少、若手事業者の参入増加を実現した事例の分析と、住居が高台に分散している被災地の中心市街地機能の回復の現状と課題に注目した情報収取である。(3)地方における国際化推進のひとつとして注目されている外国人高度人材の活用に関する調査を行った。九州地域の主要大学の協力を得て、在籍する大学院生を対象として就職についての意識調査をウエブアンケートで実施した。この調査の概要を経済産業研究所ディスカッションペーパーとして公開した。(4)地方におけるイノベーション活動の指標として注目されている、スタートアップ創出の地域要因を調査するため、INITIAL(旧entrepedia)社のデータベースと契約して情報収集を行い、統計分析のためのデータベースを作成し、分析結果をまとめた結果を経済産業研究所ディスカッションペーパーとして公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の基礎的概念を現した理論の論文がすでに英文学術誌で公刊されたことは、本研究が順調に進展していることを示している。地方経済の活性化の観点について以下の点が明確になった。(1)自然資源に立脚した産業の製品差別化が地方の活性化に重要であるだけでなく、国全体に便益をもたらすという視点が加わったこと、(2)高齢化した事業者から新規事業のスタートアップ企業への地域資源の経営権の円滑な移転をすすめるとともに、起業家が初期費用が低い地方の経営環境を活用するために必要な政策がより明らかになっていること、(3)高度人材として留学生を積極的に雇用することで、地方企業の国際化を進めることが、国全体の人口が減少していることによる需要の制約を緩めるために重要であることが示されたこと、(4)被災地の復興について、移出型産業としての一次産業の差別化化と中心市街地の活性化を両輪として進めることが、若者人口の流出を抑制し、社会の安定をもたらすという論点が整理されたこと。
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今後の研究の推進方策 |
INITIAL社のデータベースを活用したスタートアップ企業の立地要因の分析をさらに進める。実証分析結果を論文にまとめて学術誌に投稿する。過去に出版した日本語の書籍の主要部分を英文翻訳を進めるとともに新しい内容を追加して、海外出版社から出版する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2019年度中に予定して東北地方での臨地調査のための出張が新型コロナウイルス感染拡大により実施できなかったため。2020年度中に状況が整い次第実施したい。
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