研究課題/領域番号 |
18K18584
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
三橋 平 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90332551)
|
研究分担者 |
徳川 城治 順天堂大学, 医学部, 先任准教授 (80348945)
三橋 立 順天堂大学, 医学部, 准教授 (50286720)
|
研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2022-03-31
|
キーワード | 経営学 / 組織学習 / 医療現場 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、1. 進化論的な学習理論を礎としながら、新しい視点から学習理論の検討を行うこと、2. 経営学の研究者と臨床医が共同研究することで、これまでにない新しい考えとデータに基づく学習研究を行うこと、3. 臨床医に対して新しい知見を与えうる組織論研究を行うこと、にある。本研究は挑戦的研究(萌芽)課題であることから、これまで仮説検証型の研究が主であった学習の研究に、観察に基づく研究を持ち込み、どこまで医療現場のデータを使用できるのかを探っている。昨年度は2つのデータ収集プロジェクトを行った。第1のプロジェクトは、いわゆるDoor to CTに関するプロジェクトである。脳卒中A患者(発症から24時間以内に脳卒中と疑われる患者)が救急外来で病院に来院した際に、病院のドアからCTまでの時間を指す。脳の血流が止まると1分間に約19万個の脳細胞が死滅すると言われており、この時間短縮に対する関心は高く、近年の研究例もいくつか発見された。本年度はフィードバックの効果を見るとともに、このデータベースをさらに拡張し、COVID19が与える医療機関への負担をDoor to CTの観点から見る分析を進めている。第2のプロジェクトは、医療現場における患者誤認や物品管理などの安全に関するプロジェクトである。先行研究を参考に、自分主体のポスターと他人主体のポスターを作成し掲示を行い、それによる効果の測定を試みた。しかしながら、ポスター掲載後にサンプルとした医療現場でインシデントが発生し、追加的介入が発生したためにポスター自体の効果を見ることが難しくなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで医療現場で働く医師である共同研究者には多忙の中で時間を捻出し、ミーティングをお願いしてきた。しかし、COVID19によって病院へのアクセスが難しくなったため、進捗スピードが遅くなっている点は否めない。しかし、このような状況の中でも、着実に進展は見られる。第1のプロジェクトについては、順調にデータベースが拡張されている。また、これまで2回の緊急事態宣言の前後からデータ取得しているため、COVID19がどの程度医療現場への負担をもたらしたのか、また、それによって患者の福祉に影響があったのかを推定することができる。また、1度目と2度目の緊急事態宣言がもたらした影響を比較することで、患者側の学習と医療提供者側の学習という2つの学習を見ることができる状況になっている。また、観測期間の初期のデータを用いた論文は提出済みで、今後公刊に向けての努力を続ける。 第2のプロジェクトについては、キーワードを医療現場の安全性と捉えなおし、患者の安全だけでなく、職場としての働きやすさに寄与できるように課題の再設定を行った。また、それに合わせて、早稲田大学、順天堂大学で倫理委員会から改めて研究許可を頂いた。ただ、昨年度収集した啓発ポスターについてのデータは他の影響との混合効果が予測されるため、今後の取り扱いには注意が必要である。病院内でこれまで収集されているデータへのアクセスを確保しつつ、データ整理を行っている状況である。
|
今後の研究の推進方策 |
第1に、第1の課題については、投稿した論文が公刊されるよう努力を続ける。 第2に、第1の課題をさらに拡張し、COVID19を研究コンテクストとして用いた論文を執筆予定である。患者側の学習状況を見るために、発症から病院搬送までの経過時間に関するデータも新たに入手し、分析を行う。これによって、第1の課題から最低2つの論文がまとめられると考えている。 第3に、第2の課題については、新たな介入を行う形での話し合いを病院側と行っている。実際のフィールドを用いた研究であるため、極端なスピードアップは図れないが、着実に課題を進めていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID19により国際学会が中止となったために研究計画通りに進まなかった。昨年度に繰り越しを申請した。
|