研究課題/領域番号 |
18K18585
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 智英 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50813648)
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研究期間 (年度) |
2018-06-29 – 2023-03-31
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キーワード | 新しい資本主義 / 付加価値分配計算書 / DS経営 / 成熟経済社会 / サステナビリティ / 分配政策 / ナッジとしてのアカウンティング / 利益というアポリア |
研究実績の概要 |
本研究は主として日本など、成熟経済社会(ポスト・グロース・エコノミー)のサステナビリティのための研究である。発展途上国にくらべ先進国のサステナビリティ研究は国際的にも例を見ない。これまで成長を前提とした経済政策を通じて国民経済の健全な発展が企画されていたが、準完全競争、準需要飽和、急激な人口減少を特徴とする成熟経済社会における新しい経済・会計政策とはどのようなものか。従来の「損益計算書」や「利益」に代わる経営指標やフォーマットを考案し、成熟経済社会のサステナビリティに寄与しうるか研究を進めてきた。
かつて希少資源であった「金融資本」は余剰しており、新たに希少資源として注目されているのは「人財資本」である。希少財としてのヒトを動機づけ、イノベーションを推進するために、新たな財務諸表(付加価値分配計算書:Distribution Statement)を提案した。コロナ禍のオンライン環境を逆手に取りシミュレーション実験を開発し、この財務諸表の下でのヒトの行動を観察した。
結果は『成熟経済・社会の持続可能な発展のためのディスクロージャー・企業統治・市場に関する研究調査報告書 <四半期毎の開示制度の批判的検討を契機とする>』(2021)として公刊され、岸田政権の「新しい資本主義」政策の基礎として参考に供されている。官邸において継続的に勉強会が解されるに至り、2022年4月には鈴木俊一金融大臣より金融商品取引法上の四半期報告書廃止の方向性も発表されている。同年7月には『新しい資本主義のアカウンティング;「利益」:成熟経済社会のアポリア』が公刊される予定であり、付加価値分配計算書の真価が世に問われることになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は「萌芽」であり、まったく新しいアイディアを提示し、徐々に実装性を確認する計画であった。
しかし『成熟経済・社会の持続可能な発展のためのディスクロージャー・企業統治・市場に関する研究調査報告書 <四半期毎の開示制度の批判的検討を契機とする>』(2021)の公刊を機に、岸田政権幹部や官僚に見出され、一部「新しい資本主義」政策の基礎を構成していると理解されている。
2021年の夏以降は毎週のように官邸に召喚されたり、与党の委員会のメンバーとして討議を続け、また各種経済団体主催の勉強会等でプレゼンテーションが求められている。こうした機会を通して、急激に新たなデータや知恵が蓄積されている。これまでにプライム市場上場会社12社との協働もあり、実装に向けて研究が進められている。
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今後の研究の推進方策 |
与えられた政治的な機会とプライム市場上場企業との協働の機会等を有効に生かし、DS経営(Distribution Statement Management Model)の実装に向けてデータや知見の蓄積を推進する。
本研究は成熟経済社会における新しい経営・経済管理の方法である。成熟経済社会化の先端を行く日本がリードし、四半世紀後には成熟化を迎える中国・インドにも似たような政策が有効であるか、国際的な共同研究の可能性を追求している。中国においては政府系の人民大学と財政部、インドにおいては企業省(Ministry of Corporate Affairs)が協働を申し出ている。
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次年度使用額が生じた理由 |
誤差の範囲内である。
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